5Gスマホの2万円時代がやってきた!ファーウェイとシャオミが起こす価格破壊

6月4日、日本のスマホ業界に激震が走った。ファーウェイとシャオミが日本で激安スマホを発表したからだ。この両者は世界中で低価格スマホを次々と発表しており、最新の通信方式「5G」対応スマホも海外で3万円を切る製品が登場。スマホの価格破壊が一気に進もうとしている。

クワッドカメラで2万円台
5Gスマホも4万円で買える

シャオミの日本向け最新モデル「Redmi Note 9S」は税込み定価2万4800円という格安スマホだ。SIMフリー市場で販売されるため、通信キャリアとの2年契約等は一切いらない。2年間使い続けるなら毎月の支払額は1000円強、1日あたりなんと34円で買えてしまうのだ。

1日34円で買えるRedmi Note 9S。

もちろん今でも2万円台の低価格スマホは多数販売されている。しかし価格の安いスマホは「旧モデル」「低速CPU」「解像度の低いディスプレイ」「低カメラ画質」「安い仕上げの本体」など、欠点を持つ製品も見受けられる。自動車の世界に高級車やスポーツカーから、低価格な軽自動車まで様々な車種があるように、スマホと言ってもすべてが高性能な製品とは限らないのだ。また家電量販店で格安スマホを見つけたと思ったら、所謂格安SIMと呼ばれるMVNOキャリアとの契約が必要なこともある。スマホの世界では「安いものを見かけたら、すぐに飛びつかずに性能や支払い方法を確認する」が鉄則だ。

ところがシャオミのRedmi Note 9Sは2万円半ばとは思えない性能のスマホなのだ。ディスプレイサイズは6.67インチ、解像度は2400×1080ピクセル。チップセットはミドルレンジモデル向けのクアルコムSnapdragon 720Gを採用。メモリ4GB+ストレージ64GBは価格相応レベルだが、カメラは4800万画素の広角に800万画素の超広角、500万画素のマクロもそなえ、200万画素の深度測定カメラでボケ写真も得意とする。そしてバッテリーは5020mAhで1日の利用も問題ない。

ディスプレイ、カメラ、バッテリーとコストパフォーマンスは申し分ない。

格安スマホとしては4月に発表になったアップルの「iPhone SE」も注目を集めている。ディスプレイサイズは4.7インチ、解像度は1334×750ピクセル。カメラは1200万画素を1つだけでバッテリーも1821mAhしかない。チップセットこそ上位モデルと同じ「A13」を採用しているが、メモリ3GB+ストレージ64GBのモデルが税込みで4万9280円。性能だけを比べると、Redmi Note 9Sのコストパフォーマンスの高さがわかるだろう。

シャオミの製品を見て「どうせ中国メーカーの格安品だろう」と思う人も多いだろう。だが実物を触らずにイメージだけで決めつけてしまうなんて人生を損してしまう。中国メーカーのスマホが安いのは品質を下げているからではなく、「高性能を保ちつつ、他社との価格競争に打ち勝つ」製品開発を続けた結果がもたらしているのだ。

そのシャオミが追いかけているメーカーがファーウェイである。ファーウェイも6月4日に低価格スマホ「P40 lite E」を発表した。価格は同じ2万4800円だが、こちらは「税別」だ。外部端子が世代の古いマイクロUSBであり、ディスプレイも6.39インチ1560×720ピクセルと劣っている。カメラも4800万画素を含む3つしかない。低価格スマホの競争ではシャオミの製品が打ち勝っているのだ。

日本の5Gスマホの価格を半額にしたファーウェイP40 lite 5G。

しかしファーウェイには大きな武器がある。同日発表された「P40 lite 5G」は名前の通り5Gの通信方式に対応し、価格は税込み4万3780円だ。現在日本で販売されている5Gスマホは10万円を超えるものばかりであり、シャオミは日本の5Gスマホの価格を一気に半分にまで引き下げたのである。チップセットは5Gに対応するミドルハイレンジ向けの「Kirin 820 5G」、ディスプレイは6.5インチ2400×1080ピクセル、カメラは6400万画素を含む4つを搭載する。5Gはまだまだ使えるエリアが少ない、しかし5Gを試してみたいと考えている消費者にとって、気軽に5G体験できるスマホなのだ。

格安5Gスマホ競争も激化
2万円台の製品が続々登場

格安スマホと言えば「安かろう・悪かろう」だったのは遠い昔の話になりつつある。買ってみたもののまともに使えないような製品を出していたメーカーは次々と競争力を失い、後に残ったのは低価格品でも手を抜かないモデルを出し続けてきたメーカーだ。当初はシャオミが仕掛けた格安スマホもファーウェイが追従し、今やこの2社が価格競争面でも熾烈な争いを繰り広げている。

特に両者の母国である中国では毎月、いや毎週のように国内メーカーが新型スマホを発表している。2020年に入ってからは5Gスマホばかりが発表されており、価格の下落も著しい。

中国の格安5Gスマホは2019年12月にシャオミが「Redmi K30 5G」を1999元(約3万1000円)で発表してから競争に火が付いた。5月にはマイナーチェンジ版となる「Redmi K30 5G Speed Edition」を1899元(約2万9000円)で投入。ところがすぐさまファーウェイが同じ価格で「Honor X10」をリリースすると、立て続けに1699元(約2万6000円)の「Enjoy Z 5G」を発表し、5Gスマホの最低価格を更新した。

ファーウェイ最安値の5Gスマホ、Enjoy Z 5G。

このままファーウェイが低価格5Gスマホで販売数を伸ばすと思いきや、すかさずシャオミは1599元(約2万4000円)となる「Redmi 10X 5G」を出し対抗、Enjoy Z 5Gの発表からわずか2日で5Gスマホ最安値の座を奪い取った。しかも5月最後の仕上げにはもう一つのマイナーチェンジモデル「Redmi K30i 5G」を1799元(約2万7000円)で発表。なんと5月に入ってからファーウェイ2機種、シャオミは3機種の1000元台5Gスマホを出してきたのだ。

業界最安値5Gスマホ、Redmi 10X 5G。

この2社の動きに他の中国メーカーも追従を見せているが、2000元を若干上回る価格のモデルを出すことで価格競争から一歩距離を置いている。世界シェア2位のファーウェイと4位のシャオミとまともに張り合っていたら体力が持たないからだ。もちろんカメラ画質などで差をつけることで、両者の激安スマホより上位モデルに仕上げている。

各社が価格の安い5Gスマホを次々と出しているのは、中国国内の5G利用者が急成長しており、4Gスマホから5Gへと買い替える消費者の数が増えているからだ。中国最大キャリアのチャイナモバイル(中国移動)の5G加入者数は今年2月に866万、3月に1632万、4月に1202万増えている。平均すると毎月約1000万以上の5G加入者が増加しているのだ。それらの消費者の中には低価格な5Gスマホを求める層も多い。低価格な5Gスマホを出せば出すだけ売れる、それが今の中国市場なのだ。

5G利用者急増に合わせ、格安5Gスマホの数を各社が増やしている。

消耗品になるスマホ
価格の2極化が進む

Strategy Analyticsの調査によると、2020年第1四半期の世界の5Gスマホのシェアは出荷台数ベースでサムスンが1位となる34.2%、しかし2位ファーウェイは33.2%と僅差で迫っている。3位はVivoの12%、4位がシャオミ10.4%、5位OPPO 5%と続く。それ以外のメーカー(LG、モトローラなど)は5%以下だった。サムスンとファーウェイは上位モデルがよく売れたこともあるし、Vivoはいち早く低価格化に取り組んだため3位につけた。しかし、このデータはファーウェイとシャオミの1000元台5Gスマホが出る前であり、第2四半期は順位に大きな変動がおきそうだ。

シャオミはファーウェイに先駆けて379.9ユーロ(約4万7000円)の5Gスマホ「Mi 10 Lite 5G」をヨーロッパで販売している。日本でもKDDIから発売予定で、ファーウェイのP40 lite 5Gと合わせ日本でも低価格5Gスマホ競争が始まりそうだ。これからは4Gスマホより5Gスマホのほうが安いという逆転現象が起きるのである。各国で5Gユーザーが増えていく中で、5Gスマホを求める消費者に対して低価格モデルを提供することは販売数増だけではなくブランド認知度の向上にもつながるはずだ。

日本でも発売予定のMi 10 Lite 5G。

日本ではキャリアによるスマホの極端な割引販売が禁止されたことで、収入や利用形態に見合ったスマホを消費者が選ぶ時代に移行しつつある。先に端末販売の適正化が行われた韓国では低価格スマホが一気に増えたという前例もある。学生が皆iPhoneの最新上位モデルを買う、というのは市場がゆがんでいたからできたこと。そしてもはや低価格なスマホであっても十分な性能と品質を備えている。日本人が知らぬ間にファーウェイとシャオミ、さらに他の中国メーカーが中国市場で競争を繰り広げた結果、スマホの価格は一気に低価格化が進んでいるのである。

とはいえ、誰もが格安品だけを好むわけではない。洋服でもバッグでも、あるいは腕時計でもブランド品を好む消費者は多い。それはIT製品であっても同様だ。アップルやソニー、サムスンを求める人は、価格だけではなく性能や品質、そしてブランドに信頼を寄せているのである。低価格スマホの登場はスマホの性能格差をなくす一方で、高価格な製品に対する消費者を厳しくする。そしてその製品にブランド力を感じられるのであれば、消費者はあえて高い製品を選ぶのだ。

ライカカメラのP40 Pro+も出すファーウェイ。

ファーウェイは低価格スマホから高性能カメラ搭載のハイエンドモデルまで幅広い製品ラインナップを揃えつつ、それぞれの製品のターゲットユーザーを明確にすることにより「ライカカメラのハイスペックスマホメーカー」というイメージを崩すことなく「格安スマホも作るメーカー」という、2つの顔を両立させることに成功している。サムスンも同様だ。そして今、シャオミがそれを追いかけるべく、高性能カメラフォンの開発にも躍起になっている。「高いスマホはいいスマホ、安いスマホは性能が低い」時代は終わりとなり、これからのスマホ選びは「ブランドと信頼で選ぶか、日用品として選ぶか」という二極化が進むことだろう。


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