ここ数週間、TechCrunchが追いかけてきた大きな取引はTikTokだったが、実は交渉中の別の大規模な契約があった。
スマートフォンやその他の分野でプロセッサチップの最も重要な設計者であるArm Holdings(アームホールディングス)は、ソフトバンクグループが投資の回収に取り組む中で売却の対象になっている。ソフトバンクグループは、Elliott Management(エリオットマネジメント)などの活動的な投資家を黙らせるために追加の資金を調達も進めている(未訳記事)。なお、ソフトバンクグループは、2016年にArmを320億ドル(約3兆4000億円)で買収(未訳記事)した。
これらの協議は結論に向かっているようだ。Wall Street Journalは、ソフトバンクグループがNVIDIA(エヌビディア)に現金と株式でArm株を売却することで、同社の価値が400億ドル(約4兆2460億円)になると最初に報じた。 Financial Timesは米国時間9月12日の午後、さらに取引の概要を確認し、早ければ9月14日の月曜日にも発表される可能性があると伝えた。
NVIDIA、Arm、ソフトバンクグループからの正式な確認を待つ間、いくつかの考えがある。
第1にArmは、現在では年間数十億個もの新しいチップがライセンスの下に製造され、大成功を収めているチップ設計の転換を模索している。5月にTechCrunchが報じたように、同社は新たな成長市場に積極的に参入(未訳記事)しており、有名なブランドの成功例をいくつか挙げている。その中にはアップルがMacのラインアップにArmプロセッサーを取り入れると発表したことも含まれている。
ソフトバンクグループは2016年に同社を買収して勢いを取り戻した。前述の400億ドルがArmの現在の実際の価値だとすれば、約4年間で25%の利益を得たことになる。ソフトバンクグループの最近の芳しくない投資実績を考えるとかなりの利益に思えるが、もちろんこのような高価な資産を購入する際には莫大な費用がかかっている。なお、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが公開株を購入したNIVIDIAは、AIやブロックチェーン・アプリケーションによって株価が16倍以上に急上昇している。
第2に取引が成立したとしても、Armにとってはやや静かな決着となる。ケンブリッジに拠点を置き、英国を代表する大学と深いつながりを持つ同社は、 Alan Turing(アラン・チューリング)氏が計算可能性の開発に重要な役割を果たしたコンピュータサイエンスの最前線で、英国の長い遺産の象徴として見られてきた。
Armの売却は、英国政府が欧州連合(EU)との産業政策、特にArmが開発していたチップ技術へのより資金提供を巡って議論する準備をしているタイミングで行われた(Financial Times記事)。もちろん、Armが従業員を移動させることはないが、米国の半導体大手と日本の持ち株会社が同社の株を所有することで、同社の比較的独立した事業は終了することになるかもしれない。
第3として最後に、今回の買収によりNVIDIAは半導体市場で圧倒的な地位を得ることになり、同社の強みであるグラフィックスやAI処理のワークフローとArmのチップ設計を融合させられることになる。おそらく完全な垂直統合にはならないが、この組み合わせにより同社が主要チップメーカー1つとしての地位を強化することになるだろう。
それはまた、Intel(インテル)が、かつては小さかったNVIDIAにどれほどの遅れをとってしまったががわかる。インテルの時価総額は約2100億ドル(約22兆3000億円)で、NVIDIAの3000億ドル(31兆8400億円)よりも少ない。過去数年のNVIDIAの急成長に比べて、インテルの株価は実質的に一直線であり、このニュースはインテルにはあまり歓迎されそうにない。
国際政治が絡み、Armの置かれている微妙な立場を考えると、どのような契約であっても、複数の国で独占禁止法に関する慣習的な審査を受けなければならず、英国では国家安全保障に関する審査を受ける可能性がある。
ソフトバンクグループにとってこれは巨額損失に直面した同社の資産整理の新たな動きだ。そして少なくとも現時点では、同社は勝利を手にしそうだ。
画像クレジット:Kiyoshi Ota / Bloomberg/ Getty Images
[原文へ]
(翻訳:TechCrunch Japan)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/09/13/2020-09-12-softbank-could-make-gasp-a-profit-on-its-expected-sale-of-arm-for-40b/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Danny Crichton
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