企業向けID管理のOktaがSaaSへのログイン統計発表、Office 365が(一応)トップ

企業向けにID管理とクラウドアクセスのインテグレーションを提供しているOktaは毎年、同社の認証システムを通じて何百万件ものSaaSアクセスを処理している。ありがたいことに同社はそのデータをベースにした年次報告書を発表してくれる。最新のレポートによれば、この1年でダントツの人気だったツールはMicrosoft 365(旧Office 365)だった。

アプリの人気は地域によって大きく違っていることに注意すべきだが、Office 365はグローバルでも国、地域別でも、要するにどの項目でもナンバーワンだった。レポート中の他のプロダクトではこういう結果が出ていない。つまりOffice 365は世界中で(少なくともOktaを使用している企業の間で)最も広く使用されていることが判明した。

クラウド関連の問題では常にそうだが、サインインした人数が多いというだけではOffice 365とMicrosoft(マイクロソフト)が全面的な勝者だと断定はできない。現実のクラウドは複雑な市場であり、ユーザーがあるツールを利用していて、直接ライバル関係にある別のツールを利用することを妨げるものではない。

たとえばMicrosoft 365のユーザーの36%が、よく似たオフィス生産性ツールであるGoogle Workspace(旧G Suite)を併用していることがレポートで述べられている。OktaはOffice 365のユーザーの42%がZoomを使用し、32%がSlackを使用していることも発見している。

Office 365のTeamsにもZoomに似たリモートワーク機能が無料でバンドルされていることを考えると、これは大いに注目すべき点だ。またGoogleハングアウトも利用者が多い。ユーザーは好みに合わせてツールを選び、ときにはほぼ同機能のライバルツールを併用することもあるわけだ。レポートによればOffice 365ユーザーのうち44%がSalesforce、41%がAWS、15%がSmartsheet、14%がTableau(Salesforceが所有)を利用している。ところがMicrosoftはこれらすべてのカテゴリーで競合プロダクトを持っている。

Microsoftはもちろん巨大企業であり、膨大な製品群を有している。しかしこのレポートはユーザーには「ブランド選考」はほとんどないことを示している。Office 365のファンだからといって、同社の他プロダクトのファンになるということはない。同種、同機能の製品カテゴリ内でさえブランドへの忠誠心はなく、ライバル製品の併用が普通に行われている。

レポートを読み進めると他のデータもとても興味深いことがわかってくる。もちろんこのレポートではSaaS全般の状況を知る決定的な窓ではない。あくまでOktaインテグレーションネットワーク(OIN)上でのSaaSの利用状況についての統計だという点は念頭に置くべきだろう(同社自身、調査手法の章でこの点を明確に認めている)。そうであっても非常に重要なレポートだ。

Oktaは「本レポートのデータは、あくまでOktaのユーザーを対象としたものであることに注意してください。この統計はOINを介してアクセスされたアプリケーションやサービス、またユーザーがそれらのサービスを介してアクセスしたツールに関するものです」と述べている。

そうであってもこの統計は9400社のOktaユーザーと6500種類のSaaSツールへアクセス状況を集計したものであり、当然同社はSaaSの現状について見解を得る非常に都合がいい立場にある。このレポートは貴重な資料だ。クラウドは複雑であり、決してゼロサムゲームではないという結論が引き出せそうだ。また多数の分野で勝者になっても全面的な勝者であることを保証するものではないことも判明した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SaaSMicrosoft 365Okta

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:滑川海彦@Facebook


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