NASAが自律型軌道離脱システムや金星でも使えるバッテリーの研究に補助金

NASA(米航空宇宙局)のSBIRプログラム(中小企業技術革新研究プログラム)は定期的に将来有望な中小企業や研究プログラムに補助金を出している。そしてその補助金が交付されたリストを調べるのは常に興味深い。今回のリストから、特に説得力のあるもの、あるいは宇宙業界のミッションと産業にとって新たな方向を示している1ダースほどの企業と提案を紹介しよう。

残念なことに、現在提供できるのは下記のような短い説明だけだ。補助金対象となった企業や提案は往々にしていくつかの方程式やナプキンの裏に描いた図の他に提示するものがないほど初期段階にある。しかしNASAは目にすると将来有望な取り組みがわかる(SBIR補助金の申し込み方法についてはこちらに案内がある)。

自律型軌道離脱システム

Martian Sky TechnologiesはDecluttering of Earth Orbit to Repurpose for Bespoke Innovative Technologies(DEORBIT)で補助金を獲得している。これは低軌道のための自律的クラッター除去システム構築する取り組みだ。ある決まった量をモニターしながら侵入してきたものを除去し、建設や他のクラフトの占有のためにエリアを開けておくためのものだ。

画像クレジット:Getty Images

超音波の積層造形

3Dプリント、溶接、そして「軌道上サービス、組み立て、製造(OSAM)の新興分野にとって重要なものについて、さまざまなかたちの提案が数多くある。筆者が興味深いと思ったものの1つは、超音波を使っていた。筆者にはそれが奇妙に思えた。というのも明らかに宇宙では超音波が作用するための大気がないからだ(彼らもそれを考えたと想像する)。しかしこの種の反直感的なアプローチは真に新たなアプローチにつながり得る。

ロボットが互いを見守る

OSAMにはおそらく複数のロボットプラットフォームの調整が含まれ、それは地上においても十分難しいものだ。TRAClabsは有用な他のロボットの視点を提供できるところでなくても自律的にロボットを動かすことで「知覚フィードバックを高め、オペレーターの認知負荷を減らす」ための方法に取り組んでいる。シンプルなアイデアで、人間が行う傾向にある方法に適する。もしあなたが実際のタスクを行う人でなければ、あなたは邪魔にならないよう何が起きているかを目にするのに最適の場所に自動的に移動する。

3Dプリントされたホール効果スラスター

ホール効果スラスターは、特定のタイプの宇宙での操作でかなり有用となり得る電気推進の高効率なフォームだ。しかしそれらは特にパワフルではなく、既存の製造テクニックで大きなものを作るのは難しいようだ。Elementum 3Dは新たな積層造形テクニックと、好きなだけ大きなものを作ることを可能にするコバルト鉄の原料を開発することでそれを達成しようとしている。

金星でも使えるバッテリー

金星は魅力的なところだ。しかしその表面は地球で作られた機械にとっては極めて敵対的だ。鍛えられたPerseveranceのような火星ローバーですら数分でダメになり、華氏800度(摂氏426度)では数秒しかもたない。ダメになる数多くの理由のうち1つは機械で使われるバッテリーがオーバーヒートを起こし、おそらく爆発するということだ。TalosTechとデラウェア大学は大気中二酸化炭素を反応材として使うことで高温でも作動する珍しいタイプのバッテリーを手がけている。

ニューロモーフィック低SWaP無線

あなたが宇宙に行くときは重量と体積が重要で、宇宙に行ってからは電力が重要となる。だからこそ、既存のシステムをコンパクトで軽量、電力(低SWaP)代替のものに切り替える動きが常にある。Intellisenseは着信信号を並べ替えて管理するという部分を簡素化・縮小するためにニューロモーフィック(たとえば空想科学的な方法ではなく頭脳のような)コンピューティングを使って無線に取り組んでいる。1グラムでも軽くすることは宇宙船の設計者がどこでも取り組めることであり、パフォーマンスの向上を図れるところでもある。

LiDARで宇宙を安全なものに

AstroboticはNASAの今後数年の惑星間ミッションにおいて頻繁に目にする社名となりつつある。同社の研究部門は、宇宙船とローバーのような車両をLiDARを使ってより賢く安全なものにすべく取り組んでいる。同社の提案の1つが、評価と修理の目的でスパースシーン(例えば広大な宇宙に対して1つの衛星を他の衛星からスキャンするなど)の1つの小さな物体の画像にピンポイントでフォーカスするLiDARシステムだ。もう1つの提案には、惑星の表面上の障害物を特定するのにLiDARと従来の画像手法の両方に適用する深層学習テクニックが含まれる。これに従事しているチームは現在、2023年の月面着陸を目指しているVIPERウォーターハンティングローバーにも取り組んでいる。

関連記事:NASAが月面の水源探査車VIPERの輸送に民間企業のAstroboticを指名

宇宙ファームのモニタリング

Bloomfieldは農業の自動モニタリングを行っているが、軌道上あるいは火星の表面での植物栽培は地上で行うものとやや異なる。同社は、微小重力といった特殊な状況で植物がどのように成長するのかを観察してきた小さな実験ファームのようなControlled Environment Agriculture(環境抑制農業)の拡大を願っている。植物の状態を絶えずモニターするのにマルチスペクトル画像と深層学習分析を使う計画で、宇宙飛行士は毎日ノートに「葉25が大きくなった」などと記録する必要はない。

レゴリスブロック

アルテミス計画(NASAの有人月探査)は月に「滞在する」ために行くというものだが、どうやって滞在するかはまだはっきりとわかっていない。研究者らは必要なものすべてを月に持ち込むことなしにロケットに燃料を補給して打ち上げる方法、そして月面ロケット打ち上げパッドを文字通りブロック1つ1つで建設するExploration Architectureを研究している。この研究は月の粉塵あるいはレゴリス(堆積物)を溶かし、必要なところに置けるよう焼いてブロックにする統合システムを提案している。これを実行するか、地球のブロックを持ち込むかになるが、後者の方はいい選択肢ではない。

その他いくつかの企業や研究機関もレゴリス関連の建設とハンドリングを提案した。これはいくつかあるテーマの1つで、テーマの一部は追求するにはあまりにも小さいものだ。

他にはエウロパ(木製の第2衛星)のような氷の世界を探検するためのテクノロジーというテーマもあった。金星のほぼ逆の氷の惑星は多くの点で「通常の」ローバーにとって致命的で、パワー、センシング、横断のためのアプローチで必要とされる条件が異なる。

NASAは新たなトレンドにオープンで、衛星や宇宙船においてもそうだ。こうした新たな技術の一群の管理は多くの作業を伴い、もしそうした新技術が1つの分散型マシンとして機能するとしたら(これは一般的な考えだ)、しっかりとしたコンピューティングアーキテクチャの支えが必要となる。多くの企業がこれを達成しようと取り組んでいる。

NASAの最新SBIR補助金リストの残り、そしてテクノロジートランスファープログラムのセレクションもこちらの専用サイトで閲覧できる。もし政府の補助金獲得に興味があるのなら、こちらの記事も読んで欲しい。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA補助金金星火星アルテミス計画バッテリーLiDAR

画像クレジット:Space Perspective

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi


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