今回、時計ジャーナリストの篠田哲生さんに紹介してもらうのは、「新コンセプト」をまとった4本だ。刻々と変化を遂げる世界の状況に合わせて、機構はそのままでもこれまでとは違う意味を持っていたり、考え方をチェンジしているモデルが登場している。新時代にふさわしい時計たちが、また新たな楽しみ方をもたらしてくれるだろう。
■耐磁性能など時代に合わせたアップデートが
「機械式時計の基本的な機構や構造は、もう3世紀くらい前から変わっていないのだが、それでも時代に合わせてコンセプトや機構を細かくブラッシュアップしている。
例えばクロノグラフはより正確に計測するための進化しており、ブランド力を高めるために自社製ムーブメントの開発も重要視されている。また繊細な機械式時計を安全に使うために耐衝撃性能や耐磁性能を強化するなど、新しいコンセプトを打ち出した時計が目立つ。
さらに今年らしい新コンセプトとしては、SDGsやエシカル、サステナブルといった考え方を取り入れるブランドも増えてきた。なかでもフェアマインドやフェアトレードといった、人権問題へ取り組んだショパールが採用する“エシカルゴールド”をはじめ、環境問題への意識も高まっている。
そういった理念が投影されたモデルたちが増えており、時計選びの新しい視線となりつつあるのだ」(篠田)
針の動きが新しい
ゼニス
「クロノマスター スポーツ」
価格:116万6000円
1969年に誕生して以来、高性能クロノグラフムーブメントの代表として称賛されてきたゼニス「エル・プロメロ」がついに大型リニューアルを行った。毎時36000振動のハイビート仕様で、1/10秒の計測が可能なのは変わらないが、なんと中央のクロノグラフ秒針が10秒で一周するようになり、ベゼルの目盛りと組み合わせて簡単に1/10秒の単位を確認できるように進化した。計測機器としての価値を高めた最先端のクロノグラフだ。自動巻き、SSケース、ケース径41mm。
新しい機械式ムーブメント
シチズン
「ザ・シチズン/メカニカルモデル」
価格:60万5000円(8月発売予定)
ハイテク系だけでなく、機械式ムーブメントの製造も長年継承してきたシチズンが、久々に高級ムーブメントとしてCal.0200を製作。設計や製造はシチズンが行い、装飾仕上げの一部は、傘下に収めたスイスのラ・ジュー・ペレ氏が担当。その姿はシースルーバックから鑑賞可能で、斜面を活かしたケースも美しく、高級モデルにふさわしい出来となった。自動巻き、SSケース、ケース径40mm。
新しい耐衝撃構造
IWC
「ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショックアブソーバーXPL」
価格未定
激しい衝撃から時計を守るために、片持ち式のショックアブソーバーでムーブメントを宙に浮かべるように支える「SPRIN-g PROTECTシステム」を採用。さらにムーブメントを軽量化するため地板にはアルミニウム合金を使用し、ケース素材は軽くて耐傷性能に優れるセラタニウムを。様々な新しい試みを取り入れた時計であるため、年間製造本数は10本のみ。自動巻き、セラタニウムケース、ケース径44mm。
新しいエコ素材
パネライ
「ルミノール マリーナ eスティール™」
価格:105万6000円(10月発売予定)
サステナブルやエシカルといったキーワードに対して、より実践的な活動を始めたのがパネライだ。このモデルに使用される「eスティール™」は、リサイクル素材から作られた高品質のステンレススティール。しかも、その製法や関係した企業をすべてオープンソースにすることで、他社もこの素材が使える用意しているのも特徴。その理念も含めて楽しむべき時計だ。自動巻き、SSケース、ケース径44mm。
<文/篠田哲生>
篠田哲生|男性誌の編集者を経て独立。コンプリケーションウォッチからカジュアルモデルまで、多彩なジャンルに造詣が深く、専門誌からファッション誌まで幅広い媒体で執筆。時計学校を修了した実践派でもあり、時計関連の講演も行う。
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- Original:https://www.goodspress.jp/features/386611/
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