非動物由来のプロテイン製品開発に成功したThe EVERY Co.、卵市場に変化をもたらす

エッグプロテインという非動物由来のタンパク質を作る精密発酵技術を開発したThe EVERY Co.の2021年の業績が好調だ。

以前はClara Foodsとして知られていた同社は、4月にAB InBevの投資部門であるZX Venturesの投資先であるBioBrewと契約を結び、非動物由来のタンパク質を大規模に醸成することに成功した。EVERYの初の非動物性エッグプロテインは、2021年後半に最初の小売顧客との共同ブランド食材として発売される予定だ。

関連記事:「バドワイザーは卵を作る」食料大手が代替タンパク質産業に相次いで参入、投資額も急増

そして米国時間12月7日、募集額以上に申し込みのあったシリーズCラウンドで1億7500万ドル(約198億8600万円)が集まったことを発表した。この投資は、新規投資機関のMcWinと既存投資機関のRage Capitalが共同で行い、ラウンドにはTemasek、Wheatsheaf Group、SOSV、TO Venturesなど、新規および既存の投資機関が参加した。EVERYによれば、Prosus Venturesも今回の資金調達に貢献しており、合成生物学への初の投資となった。

今回の投資により、EVERYの資金調達総額は2億3300万ドル(約264億8200万円)に達した。TechCrunchでは、2015年にEVERYが170万ドル(約1億9300万円)のシード資金を調達した際に紹介した。その後当社は、2019年にはシリーズAでさらに1500万ドル(約17億円)、シリーズBで4000万ドル(約45億4600万円)の資金を確保している。10月にはThe EVERY Co.に社名を変更した。

その際、CEO兼創業者のArturo Elizondo(アルトゥーロ・エリゾンド)氏は、プレスリリースを通じ「私たちの新しいブランディングは、21世紀のフードシステムを根本的に変革し、あらゆる場所のあらゆる人間が、その過程で地球や動物に害を与えることなく、慣れ親しんだ好きな食べ物を楽しむことができるようにするという私たちのビジョンを届けるものになっています」と語った。

The EVERY Co.の創業者兼CEOアルトゥーロ・エリゾンド(画像クレジット:The EVERY Co.)

社名変更に加えて、11月には初の非動物由来のエッグプロテイン「EVERY ClearEgg」を発売し、コールドプレスジュースブランドPressedとのパートナーシップによりEVERYの製品が入ったスムージーを作り、小売デビューを果たした。

エリゾンドは、これは同社の7年間の仕事の集大成だとTechCrunchに語った。そして2019年のシリーズBは技術を証明するためのもので、今回のシリーズCでは、製品を市場に投入し、資本を活用して規模の拡大を推進することができると付け加えた。

また、この2年間でEVERYは、収益予測値だった状態から収益を得るようになり、従業員が30人から60人に増え、すべての製品に対し米食品医薬品局の承認を得て、米国、欧州、アジアで販売するようになった。

今回の資金調達により、同社は生産規模の拡大、パイプラインのさらなる製品の商業化、そして技術の新たな食品用途への拡大を図ることができる。

エリゾンドはこう語る。「私たちは今、導入促進のためのスケールアップに注力しています。B2Cについては多くの報道がなされており、Kellogg’sやGeneral Millsのような企業も追いかけてこの種の製品を発売しようとしていますが、インフラが追いついていません。これらの技術が機能し、変化を可能にするためには、それに見合った規模が必要です。当社では、その配備を始めています」。

一方、卵市場はいまだに動物由来の卵に支配されている。世界で年間1兆3000億個以上の卵が生産されているが、EVERYはその卵市場に変化をもたらそうとしている。当社の調達額の大きさは、その技術が機能し、支持を得ているということを示している。

EVERYは、Simply Egglessや今夏の初めに2億ドル(約226億7600万円)を調達したEat Just、ベルリンに拠点を置くフードテック企業で、2022年第1四半期に鶏を使わないエッグ製品を発表したPerfeggtなど、同様の動物由来でないエッグ製品に取り組んでいる企業の仲間に加わっている。Perfeggtは11月に280万ドル(約3億1700万円)を調達している。

関連記事
タマゴを使わないタマゴとマヨネーズを開発する代替タンパク製品のEat Justがさらに217億円調達
フードテックPerfeggtが植物由来の代替卵販売に向け3.2億円調達

エリゾンドは、この分野の企業が増えることは、競争ではなく「上げ潮はすべての船を持ち上げる」ものだと考えている。それよりも、認知度を高め、本物の卵と同じ割合で使用されるようにできるかが勝負だ。

「卵はほとんどすべてのものに使われている機能的な食材ですから、ただおいしいだけの製品を作っても上手くいきません。市場を席巻するためには、消費者が代わり、1:1の比率にならなくてはなりません。そうすれば既存の企業と対抗する最大のチャンスになります」と彼はいう。

Rage CapitalのマネージングパートナーであるGabriel Ruimy(ガブリエル・ルイミー)は声明文の中で「100年以上の歴史を持つ業界に革命を起こしたと確信をもって主張する企業は稀です。しかし、EVERYのアルトゥーロやそのチームは、まさにそれを実践しています」と述べている。

また、McWin Food Ecosystem Fundと世界で2300のレストランを運営するAmRestの創業者であるHenry McGovern(ヘンリー・マクガバン)は「レストラン業界は、新しい食品技術をいち早く取り入れ、消費者に紹介します。McWinは、レストランに深く根ざし、代替タンパク質のリーディングカンパニーに多くの投資を行ってきたことから、EVERYの製品を世界中のメニューに導入するという野心的な計画をサポートできる独自の体制が整っています。卵はどこにでもあるものであるだけでなく、代替することが非常に困難なものでもあります。EVERYの革新的な技術には大きな可能性を感じています」と述べている。

画像クレジット:The EVERY Co.

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)


Amazonベストセラー

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA