砂漠地帯らしい汚れを施し装甲ブルドーザー「D9R」完成!【達人のプラモ術<D9R装甲ブルドーザー>】

【達人のプラモ術】
モンモデル
1/35 イスラエル陸軍 D9R装甲ブルドーザー
06/06

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

イスラエル陸軍の魔改造ブルドーザー「D9R」のキット製作も大詰め。通常の戦車とは異なる建機らしいウェザリングが施され、いよいよ総仕上げに入ります。

*  *  *

6回にわたり紹介してきたD9Rの製作も今回が最終回。塗装した車体にウエザリング(汚し塗装)を施してよりリアルな重機の完成を目指します。さらに展示ベースを製作、戦場で活躍するD9Rブルドーザーのディオラマに仕上げてみました。

 

■乾いた汚れの再現

中東イスラエルの工兵隊に配備されているD9Rは、当初は地雷の除去のために導入されたのですが、塹壕掘る、埋める、陣地作る、瓦礫の除去、道路の整備などに使われていますが、砂漠地帯で使われるため、実車の写真などを見ると車体は乾いた、砂汚れに覆われています。履帯周りは固まった砂礫が転輪に詰まっていたり、転輪も砂礫と混じった油汚れ等、汚れ方もハンパないです。瓦礫により塗装が剥げた部分は錆びて黒くなり、ドーザーブレードの表面は鉄色が剥き出しになっています。

今回はこうした砂漠地帯で使われる乾いた汚れを、さまざまなウエザリングアイテムを使って再現してみました。

 

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■テクスチャーペイントを使って砂礫を表現

車体や足回りの砂礫の表現にはさまざまなアイテムが使われています。今回はペースト状のタミヤ情景テクスチャーペイントのライトサンド(明るい砂の色)とダークアース(泥の色)を使って、車体や履帯周りの汚れを再現します。

テクスチャーペイントはペースト状なのでそのままでは塗り伸ばしがしにくいのですが、タミヤアクリル溶剤で希釈することで筆で薄く塗り伸ばすことや重ねて厚みも出すことも可能です。乾燥後の定着性も良く、乾燥後にデザインナイフやヤスリで削ることで剥がれた感じを表現もできます

▲タミヤテクスチャーペイントはアクリル溶剤で希釈することで、薄く塗りのばすこともできる。今回は筆塗りしやすいように3倍程度に希釈

▲薄めたテクスチャーペイント(ライトサンド)を履帯と車体の下回りに塗布していく

▲車体後部のリッパーも下回りを中心にテクスチャーペイントを塗布して砂礫まみれに仕上げていく

 

■スミ入れ塗料で錆の表現

テクスチャーペイントが乾燥したら、その上からタミヤスミ入れ塗料のブラウンとダークブラウンを使って転輪周りや車体外板に錆色を入れていきます。また車体のグリル部分や大きな吸気筒には同じスミ入れ塗料のブラックを使ってディテールを強調しています。

ドーザーブレードはむき出しになった地肌を再現するために、前回の塗装で下地のオキサイドレッドを残した部分の上からダークシルバーでドライブラシを入れます。そしてウエザリングペンシルのシルバーでスクラッチ傷を描き込み、そこからテクスチャーペイントとスミ入れ塗料でガッツリと汚しています。

▲ドーザーブレードを車体から外し、ドーザーブレードと車体、それぞれにウエザリングを進めていくと作業がやりやすい

▲車体のドーザーブレード基部のボルト周り、スプロケットホイール、履帯の接続ピンにはスミ入れ塗料のブラウンとダークブラウンで錆と油汚れを再現。また車体側面のグリルはブラックのスミ入れ塗料を流し込んで奥行き感を強調

▲ウエザリングを施したドーザーブレード。下側は塗装が剥げて地肌がむき出しになった状態を再現

▲スクラッチ状の汚れはウエザリングペンシルで描きこんでいる。破損を再現したスリット状の部分にはスミ入れ塗料で錆を再現している

▲車体側面の足場プレートにはスミ入れ塗料で錆び感を入れることでアクセントとしている

 

■ウエザリングはほどほどがちょうどいい?

ウエザリング塗装は作品の表情がどんどん変化していくので、ぶっちゃけすごく楽しい作業です。ありがちなのが、もう少し汚そう、もうちょっと汚して~…などと繰り返しているうちに不自然なまでに汚れた作品になってしまうこと。やりすぎて泥の跳ね上がりが不自然な方向になってしまっているなどにも注意が必要です。

慣れないうちは全体のバランスを見ながら「まぁこんなモンかな」とちょっと控えめ位に仕上げるのが失敗しないコツです。

▲ドーザーブレードを外した状態でウエザリングを仕上げた車体。履帯周りの砂礫汚れはかなりガッツリと表現

▲ウエザリングを終えたら、ウインドウ部分マスキング剥がしていく

▲取り外せるようにした天板には機銃を取り付ける

▲内側には無線機などが再現されている

▲天板を外すと精密なコクピットを見られる

 

■お手軽展示ベースの製作

今回のD9Rに限らずAFVの作品は、単体展示もよいのですがやはりディオラマに仕上げたくなります。そこで今回はシンプルな材料を使って簡単なディオラマに仕上げてみました。

展示ベースは飛行機モデルに付属していたもので、背景の廃墟はタミヤ製情景セットから流用、瓦礫はスタイロフォームをちぎって塗装しただけです。

D9Rが大きいというか、ちょっと狭苦しい感じになりましたが、瓦礫処理をする働く重機の雰囲気が出せた展示ベースとなりました。

また以前製作したイスラエルのメルカバMk.4 から戦車兵をトレードして乗せてみました。フィギュアを乗せたことでD9Rの車体大きさがよくわかるようになったと思います。

▲手元にあった材料で製作した簡易ディオラマ展示ベース

▲崩れた瓦礫はスタイロフォーム(本来は断熱材に使われる発砲スチロールの一種。建築模型やディオラマの製作で使われる、ホームセンター入手できる)で再現

▲以前制作した同じ1/35スケールのメルカバMk.4と並べてみると、D9Rのサイズがいかに大きいかよくわかる

 

■D9Rまとめ

今回はAFVモデルに中にあって異色の存在ともいえる装甲ブルドーザーを製作しました。さらにディオラマ仕立ての展示ベースと組み合わせることで、より存在感のある作品に仕上がりました。ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください。

さて次回はなにを作りましょうか。お楽しみに!

 

■ご近所にいた軍用ブルドーザー!

筆者は神奈川にある米軍相模総合補給廠の近くに居を構えているのですが、先日何気なくフェンス越しに基地内を見たらいたんですねぇ。D9Rではないですが同じCAT社のブルドーザーが。D9Rほどゴツくはないですがデザートイエローの塗られた車体がいかにも軍用!って感じでした。まさかご近所に軍用重機がいるとは…。もっと近くに停めてくれないかなと思った今日この頃でした。

 

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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