「ZOOMER」「BW’S」「VOX」いま見ても乗りたくなる個性派原チャリ5選

かつてのバイクブームを牽引していたのは50ccの原付一種スクーターでした。年間の販売台数が10万台を超えるものも珍しくないほどの一大市場だったので、各メーカーのラインナップは今では信じられないくらい充実しており、なかにはユニークなデザインや設計のモデルもありました。

2000年代の前半くらいまでは残っていたこうした個性派原付スクーター。程度の良い中古があれば、今でも乗りたいという人は少なくないのではないでしょうか?

 

1. ホンダ「ZOOMER(ズーマー)」

ホンダの個性派スクーターで今でも人気が高いのが、2001年に発売された「ZOOMER」。その当時、原付スクーターには必須の装備であったメットイン機構や収納をキッパリ取り去り、フレームをむき出しにしたデザインはインパクト抜群でした。

丸目2灯が横に並んだフロントフェイスと、未舗装路も走れそうなブロックパターンのタイヤは、かつて「ディオ」や「モンキー」に存在した「BAJA(バハ)」バージョンのよう。そして、フレームむき出しのシンプルな造形は、1990年に登場した「ZOOK(ズーク)」を思わせるものです。

▲1990年式「ZOOK」

「ZOOMER」は当時、ホンダ社内に存在した「Nプロジェクト」と呼ばれる若手エンジニア中心のチームが手掛けたモデルで、このチームはほかにも「エイプ」や「ソロ」などユニークなマシンを世に送り出していました。

ちなみに「ZOOMER」は、現在かなり高値で取り引きされているようですが、その名を受け継いで2013年に登場した「ズーマーX」は、あまり知る人の少ない存在。110ccのエンジンを搭載していてメットイン機構も備えるなど、コンセプト的には少し異なる部分もありますが、ネイキッドスクーターのイメージは継承されています。

▲2013年式「ズーマーX」

 

2. ヤマハ「BW’S(ビーウィズ)」

オフロードイメージのスクーターとしては、ヤマハの「BW’S」も忘れられないモデルです。初代の登場は1988年で、空冷2ストロークのエンジンを搭載し、2灯タイプのヘッドライトとブロックパターンの太いタイヤを装備しており人気を集めました。

当時は走り屋に人気のハイパワーモデルがもてはやされる傾向にありましたが、最高出力6PSとややアンダーパワーのこうしたモデルも受け入れられる土壌があったのですね。

ちなみに、このマシン、フランスのMBK社が「Booster」というモデル名で現地で製造・販売が続けられていました。

▲2016年式「BW’S」

そして、2012年には台湾ヤマハが製造する4ストロークエンジンを搭載した「BW’S」が、日本国内でも正式に販売されるようになります。

丸目2灯であることは共通ですが、やや角張ったデザインとなり、リアキャリアなども装備。このモデルには100ccモデルも用意され、メットイン機構も備えていました。2016年にはより流麗なデザインにモデルチェンジ。この頃のモデルであれば、中古で入手しても安心して乗れそうです。

 

3. ヤマハ「VOX(ボックス)」

車名の通り、箱型デザインの車体を採用していたのが2006年発売の「VOX」。シート下に34Lという大容量の収納を備え、ヘルメットはもちろん、テニスラケットも収納できるというのが売りでした。一般のメットインと異なり、横開きの設計となっていたのもユニークなところ。

エンジンはヤマハの原付としては初となるフューエルインジェクションを採用した4ストロークで、当時のクラストップとなる5.2PSを発揮していました。丸目1灯のライトと、パイプハンドルのデザインも人気のポイントで、今でも乗ってみたくなる仕上がりです。

 

4.スズキ「choinori(チョイノリ)」

名前の通り、街中での「ちょい乗り」に特化した簡素な装備で、国内生産でありながら定価5万9800円という価格を実現し話題となったのが2003年発売の「choinori」。リアにはサスペンションのないリジッド構造で、4ストロークエンジンの最高出力はわずか2PSでしたが、愛らしいデザインで注目を集めました。

エンジンは一般のスクーターのようなユニットスイング式ではなく、フレームに固定されており、駆動力はチェーンでタイヤに伝達する方式とされていたのもユニークでした。この構造のため、チェーンとスプロケの変更でギア比を変えるなどのカスタムも容易。今乗るなら、そうしたカスタムも含めて楽しみたいところです。

 

5. スズキ「ストリートマジック50」

ギア付きバイクのように見えるデザインですが、スクーターと同じ無段階変速のパワーユニットを採用していたのが1997年発売の「ストリートマジック50」。空冷2ストロークエンジンは当時の自主規制値上限の7.2PSを発揮していました。この車体形状のため、収納機構は一切ありませんが、ニーグリップができることもあって、走りにこだわるユーザーには人気を集めました。

エンケイ製のアルミホイールなどを装備した「ストリートマジック50S」、オフロードイメージのブロックパターンタイヤなどを採用した「ストリートマジック50Ⅱ」などバリエーションモデルも豊富で、2006年まで生産されていました。110ccエンジンを搭載した「ストリートマジック110」も存在したので、そちらも含めて探してみるのも良さそうです。

 

<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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