【安くても傑作モノ】
人気の完全ワイヤレスイヤホンは商品数が多く、自分に合ったイヤホンは見つけにくいもの。そこで評論家の折原一也さんに、1万円以下と1万円オーバーに分け、オススメをピックアップしてもらった。
さらに実際にリスニングしてもらい、邦楽、洋楽、アニソンなど、楽曲ごとの印象や使い勝手などもチェック。きっとあなたに最適なイヤホンが見つかるはず!
AV評論家 折原一也さん
PC系出版社を経て、オーディオ&ビジュアル専門誌やWeb媒体などで活躍する音と映像の評論家。実機による高画質・高音質の評価のほか、2009年よりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員を務める
【1万円以内】
1. 日本メーカーらしいまろやかなサウンド
JVC
「HA-A5T」(4290円)
日本メーカーの高コスパ定番アイテム。高磁力ネオジウムマグネットを採用した高音質ドライバーを搭載。パワフルなボーカルと濁りのないサウンドを実現する。カラーバリエーションは5色から選択可能。
【再生時間】イヤホン:約5時間/ケース:約10時間
【重量】イヤホン:約3.9g(片耳)/充電ケース込み:約35.7g
【防水性能】IPX4
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
長時間聴いても疲れないサウンド ★3.5
厚みを出すナチュラル系で、歌声は頭の中で響く。クリアではないが長時間のリスニングでも疲れないサウンド。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
ハイトーンとボリュームある低音 ★3.5
ハイトーンの歌声はしっかりと再現。低音はボリューム感重視で、リッチな音に満たされるサウンドを求めるならアリ。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
低音のパワーが強いダイナミックなサウンド ★3
低音のパワーバランスが強く、歌声はあまり前には出ずにダイナミックな音を感じる。楽器や複雑なサウンドはやや苦手。
▼総評
低価格でシンプルな入門モデル。キツさを回避したサウンドの作りは日本メーカーらしいまろやかさを実現している。イヤホンがコンパクトなため、サイズ重視の女性にもオススメ。
2. 音質&操作性も良好 バランスよく使える
アンカージャパン
「Soundcore Life P2i」(4290円)
低音を増幅させる低音モードに加え、音声をクリアに強調するポッドキャストモードを搭載し、幅広いユーザーに対応。また周辺のノイズを除去し、声を大きく伝送する「AIノイズリダクション」の搭載で、テレワークにも使いやすい。
【再生時間】イヤホン:最大約8時間/ケース:最大約28時間
【重量】イヤホン:約4.4g(片耳)/充電ケース込み:約48g
【防水性能】IPX5
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
メリハリのきいた立ち上がる歌声 ★4
メリハリをきかせた鮮やかなサウンドでハッキリと立ち上がる歌声は、J-POPの歌声と相性が良い。小音量リスニングにも向く。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
低音の強さが強烈 唸る低音が心地よい ★4
歌声のシャープな立ち上がり、低音のアタックの強さが強烈。グングンと唸るような低音の気持ちよさは相当なモノ。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
ライブ感と高音がアニソンには相性◎ ★4
楽曲の世界観に没入させるようなライブ感を感じる。キツめの高音が本機の特色。アニソンとは比較的相性が良い。
▼総評
メリハリを効かせたサウンドキャラクターに2種類のイコライザーを採用し、さらに最低限のカスタマイズ性も確保している。片耳でも使える機能性は地味に便利。
3. 邦楽との相性が抜群 低価格でも高機能
AVIOT
「TE-D01gs」(5610円)
高音質を実現するφ6mmダイナミックドライバーを、特徴的なスケルトンデザインに搭載。ノイズを遮断する高いフィット感、外音取り込み機能、映像やゲームの音ズレを抑制するなど、低価格&多機能を実現する。
【再生時間】イヤホン:約10時間/ケース:約50時間
【重量】イヤホン:約4.6g (片耳)/充電ケース込み:約50g
【防水性能】IPX7
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
楽器の音色もしっとり J-POPとの相性が良い ★5
厚みのある歌声は美しく、楽器の音色もみずみずしく響く。リズムの刻みの見通しも良い。J-POPのサウンドは全方位に優秀。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
よく響く重低音。特に音楽の表現性が◎ ★3.5
重低音の沈み込みは深いが、リズムには弱くダンス系には不向き。しかし音楽全体を客観的に表現する特徴がある。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
音の存在が分かるフラットなチューニング ★4.5
音楽を分離して聴かせようとするフラット志向のチューニング。没入感よりも、すべての音の存在が聴ける特徴がある。
▼総評
価格以上の高音質でJ-POPと相性が良い。外音の取り込み機能や、専用アプリを使った追跡機能があったり、低価格モデルの中では機能も豊富に揃っている。
4. 重低音を求めるならハイスペックなこれ
SOUNDPEATS
「AIR3 PRO」(6480円)
没入感を高めるアクティブノイズキャンセリング(ANC)に加えて、極細のバイオセルロース振動板を採用。振幅の大きい低中音域も忠実に再現し、価格を抑えながら、ハイブランドに迫る高い音質を実現する。
【再生時間】イヤホン:約6時間/ケース:約24時間
【重量】イヤホン:約4.5g(片耳)/充電ケース込み:約36g
【防水性能】IPX4
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
歌声と楽器音をバランスよく聴かせる ★4.5
歌声をナチュラルで鮮やかに聞かせつつも、楽器の音やリズムトラックも聴かせるバランス。現代的なサウンドに相性良し。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
重低音を存分に満喫したいなら ★4.5
重低音の沈み込みはとても深く、リズムは音の響きが良くボリューム感がある。たっぷりの低音に満たされたいならおすすめ。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
曲の雰囲気よりも音の響きに特化 ★3.5
アニソンの世界感より、音の響きに特化したバランス。歌声はあまり前に出てこないので、楽曲との相性はちょっと難しい。
▼総評
1万円以下でありながら、ANCの搭載やaptX Adaptiveコーデック対応など、機能性やスペック面は本当に最強。多機能重視かつ重低音サウンドを求める人に向いている。
5. あらゆる面から見て完成度の高さが光る
Earfun
「Air Pro SV」(8990円)
イヤホンとケースのそれぞれに採用した独特なデザインが特徴のモデル。10mmウール複合ドライバーにより、パワフルなサウンドが楽しめる。風切り音低減機能、IPX5など、アウトドアスポーツでの使い勝手も良い。
【再生時間】イヤホン:約6時間/ケース:約24時間
【重量】イヤホン:約4.5g(片耳)/充電ケース込み:約36g
【防水性能】IPX5
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
強めの重低音とクリアな歌声が引き立つ ★4
重低音が強めだが、同時に歌声のクリアさ、情報量もしっかりと再現。どちらかというと現代的な電子音楽志向の曲が合う。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
洋楽の再生に最適 ずっと聴いていたい! ★5
立体的な音空間の展開、歌声とリズムを刻む音圧がまさに洋楽向け。音の見通しもよく、ずっと聴いていたくなるサウンドだ。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
音の広がりと没入感。世界観を体感したいなら! ★5
音空間の広がりがとても大きく、アニソンの世界観に没入できる。歌声や効果音が耳の周りを取り巻くような体験に相性抜群。
▼総評
独自カスタマイズしたANC精度の高さ、専用アプリからのカスタマイズ性と機能性は、ベストといえるほどの完成度。加えて音質も優秀なベストバイモデルだ。
6.欠点が少なく総合的にバランスが整っている
ソニー
「WF-C500」(実勢価格:1万円前後)
ソニーの独自技術「DSEE」を搭載し、ネット動画などの低ビットレート音源でもCDレベルのクオリティまで高めてリスニングできる。また無料の専用アプリを使えば、好みの音質へカスタマイズも可能。
【再生時間】イヤホン:約10時間/ケース:約20時間
【重量】イヤホン:約5.4g(片耳)/充電ケース込み:ー
【防水性能】IPX5
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
音の立体感や空間の広がりに特徴あり ★5
しっとりと優しく歌声が浮かび上がる、まさにJ-POP志向。楽器の立体感や空間の広がりも大きく、丁寧なサウンドが好印象。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
周りを囲まれる立体的な音質 ★4.5
適度に深く引き締まった低音にリズムの刻み、そして周囲を囲むような音の立体感。洋楽も客観的に聴きたい人向き。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
打ち込みサウンドの再現性は◎ ★4
歌声のバンドも同程度で、アニソンの世界観としてはどっちつかず。ドラム打ち込みサウンドの精緻な再現性はお見事。
▼総評
耳へのフィット感が良く、ナチュラル系のサウンドバランスも巧み。機能性だけが少し低めではあるが、大手らしい欠点が少ない定番モデルといえるだろう。
【1万円オーバー】
7. 機能性、音質も高い バッテリーだけが…
アマゾン
「EchoBuds」(USB-C充電ケース付き:1万2980円)
1万円台前半の価格ながら、アクティブノイズキャンセリング(ANC)を搭載。Alexaアプリでは各種操作設定のほか、ランニングなどのアクティビティのトラッキングも可能。IPX4等級の耐汗仕様。
【再生時間】イヤホン:約5時間/ケース:約24時間
【重量】イヤホン:約5.7g(片耳)/充電ケース込み:約44.4g
【防水性能】IPX4
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
バランスのとれた完成度の高い音質 ★4.5
みずみずしい歌声とフラット志向の楽器、上質なバランスで楽曲を聴ける。ズンズンと響く低音のボリュームも適切で完成度高し。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
クリアな音質と重低音に高いポテンシャル ★4
歌声のクリアさはしっかりしていて、重低音のパワー感も十分。洋楽に特化はしないが、ポテンシャルが高く余裕でこなせる。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
情報出力量が高く世界観に没入できる ★4.5
歌声バンドも情報を出力して、複雑なアニソンの楽曲も聴ける。音量を大きめにして聴けば世界観に没入できるサウンド。
▼総評
Alexaと連携したスマホ呼び出しや操作の機能に加え、音質も予想以上に良くビックリ。ただし、バッテリー性能が短めで、ケースも他と比べると少し大きめなところが残念。
8. すべての項目で高評価のバランスモデル
AVIOT
「TE-D01m2」(1万4850円)
高音質なハイレゾに対応した高コスパモデル。加えて外音取り込み機能やワイヤレス充電、マルチポイント接続対応などの多くの機能を搭載。さらに、完全ワイヤレスでは最大級といえる、約10時間の駆動時間を誇る。
【再生時間】イヤホン:約10時間/ケース:約50時間
【重量】イヤホン:約5.7g(片耳)/充電ケース込み:約55g
【防水性能】IPX4相当
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
歌声、コーラスなどJ-POPに最適 ★5
歌声が美しく魅力的に立ち上がる。立体的な音が素晴らしく、楽器やコーラスの音もいい。まさにJ-POPに最適なサウンドだ。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
音の鮮やかさが際立つ美音系サウンド ★4.5
洋楽も音の立ち上がりの良さ、鮮やかさがとても良い美音系。クラブ系ミュージックに必要な重低音の沈み込みは十分に確保。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
聴き込むほどに良さが分かる音質 ★4.5
歌声の埋もれやすいアニソンでも、声が前に出るところが高評価。楽器音のリアリティもあるので、聴き込むほど評価が上がる。
▼総評
同価格帯では、ずば抜けた高音質モデル。ノイキャン対応や高音質のコーデック「aptX Adaptive」の採用、優秀なバッテリー性能が揃うなど、オールマイティに使える。
9. 機能性よりも音重視 音の良さは折り紙付き
final
「ZE3000」(1万5800円)
有線モデルのイヤホンをメインに展開していたブランドが、満を持してリリースしたモデル。ノイズキャンセリング機能は非搭載だが、aptX Adaptiveコーデックにも対応し、音質に関して全方位から徹底して注力している。
【再生時間】イヤホン:約7時間/ケース:約35時間
【重量】イヤホン:約5g(片耳)/充電ケース込み:約42g
【防水性能】IPX4
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
J-POPに最適な高音質サウンド ★5
鮮やかで魅力的に浮かび上がる歌声、存在感ある楽器、コーラスの音まですべてが美音。J-POPのための高音質サウンドだ。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
丁寧に再現する立体的な歌声 ★5
洋楽の音楽性でも歌声の美しさや、グイグイ鳴る低音まで丁寧。音の出所の位置がハッキリ立体的に聴けるところも面白い。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
さまざまな音をオールラウンドに再生 ★5
音数の多さを余裕でこなせる解像力。歌声もしっかりと聞けるし、楽器の音も優秀。まさにオールラウンダーの鳴りっぷりだ。
▼総評
機能をバッサリ捨てて、極めて優秀な音質に振り切った潔いモデルといえる。多機能さを求めていない人、とにかく音の良さを求めたいなら、指名買いすべき。
10. 好みの人に特にハマるドンシャリが特徴
JBL
「JBL Live Free 2 TWS」(1万5950円)
前モデルを上回るANC性能や専用アプリなど、高スペックを備えたモデル。さらに、リアルタイムでノイズキャンセリングのレベルを調整する“リアルタイム補正”機能を搭載するなど、とことん音楽へ没頭できる。
【再生時間】イヤホン:約7時間/ケース:約28時間
【重量】イヤホン:約4.9g(片耳)/充電ケース込み:約43.7g
【防水性能】IPX5
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
ドンシャリ好きにはたまらない高域 ★3.5
強烈に沈み込む重低音と、キンと響く高域の典型的なドンシャリ。歌声もキリっと聞こえて小音量リスニングと相性良し。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
キレの良いサウンドで臨場感が高い ★5
グイグイと唸るように響く重低音とリズムの刻みで、ダンス系の洋楽にマッチ。歌声のキレも良く、臨場感重視ならアリ。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
音数の多さを再生する密度の高いサウンド ★4.5
アニソン特有の音数の多さを、そのまま空間で展開するような密度感あるサウンド。特に低音の勢いは気持ちよく聴ける。
▼総評
リアルタイム補正のハイブリッドノイズキャンセル機能が自慢のモデル。リモートワークに最適なボイスアウェア機能も搭載する。典型的なドンシャリだが、好みの人にはオススメ。
11. “聞こえる”利便性は◎ 駆動時間には不満も
ソニー
「LinkBuds」(実勢価格:2万3100円前後)
穴があいた“リング型ドライバーユニット”を採用し、骨伝導とも違う独自の体験が可能。当然、周囲の音は聞こえてくるが、普通のイヤホンらしい聴き心地がある。テレワークやスポーツ時に使いやすい。
【再生時間】イヤホン:約5.5時間/ケース併用:約17.5時間
【重量】イヤホン:約4.1g(片耳)/充電ケース込み:―
【防水性能】IPX4
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
パワーは抑え気味だが音の広がりは感じる ★4
開放感ある構造のため、J-POPを聴いても中低音のパワーは不足気味。歌声や自然な音空間の広がりなど、ポイントは抑えている。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
低音の迫力はないがリズムは刻んでくれる ★3.5
低音でリズム重視の洋楽では、全く迫力不足で不向き。それでもリズムの刻みは感じられる工夫がある。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
音の広がりは良いが細かい表現は苦手 ★5
音空間の広がるアニソンの音を自然に広げるところは相性良し。ただ、楽器音の細かさは、開放型の構造上再現が難しいようだ。
▼総評
リング型を採用した“周囲の音が聞こえる利便性”がすべて。構造上、音質が今ひとつ振るわないところは仕方ないが、バッテリー駆動時間の短さは気になるところだ。
12. サイズが少し大きいが欠点のないバランスが◎
ビーツ
「Beats Fit Pro」(2万4800円)
AirPodsやAirPods Proと同様の使い方ができるのに加えて、Android端末でも使えるモデル。高いフィット感のほか耐汗耐水性能もあり、スポーツには最適。タッチ式ではなくボタン式のため、運動中でも誤操作が少ない。
【再生時間】イヤホン:約6時間/ケース併用:約24時間
【重量】ヤホン:約5.6g(片耳)/充電ケース込み:約66.3g
【防水性能】IPX4
▼邦楽(YOASOBI「群青」)
想像以上にクリアに聴ける歌声とバンド演奏 ★4.5
クリアに聞こえる歌声やバンド演奏など、想像以上にJ-POPもこなせる。弾みある低音の再現性もしっかりあってバランス良し。
▼洋楽(BTS「Dynamaite」)
洋楽に最適な重低音の再現性 ★4.5
グイグイと響く重低音の再現性は洋楽向き。歌声のクリアさや音空間の広がり、さらに立体感とトータルで音が整う。
▼アニソン(Aimer「残響散歌」)
音に没頭できる歌声の再現性◎ ★5
アニソンの世界観に没入できるチューンで、音空間の作りが優秀。ボーカルの再現性がよく、曲全体がまとまっている。
▼総評
音質含め、欠点がほぼ感じられないオールラウンドな性能。ANC対応はもちろん、アップル純正に準じる独自の“空間オーディオ”などの機能も自慢。
>> 特集【安くても傑作モノ】
※2022年5月6日発売「GoodsPress」6月号30-33ページの記事をもとに構成しています
<取材・文/今雄飛(ミラソル・デポルテ) 写真/小野口健太>
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