環境負荷の低減、アニマルフリー…外装やインテリアから見えるカーメーカーの“見えない主張”

いま、クルマのインテリアは自己主張する時代に入った。そう思ったのは、マツダが2023年1月にマイナーチェンジを行った「マツダ2」に乗ったときです。

全長4mをちょっと超える(4080mm)コンパクトな寸法の4ドアボディに、1.5リッターエンジンのハッチバックが、マツダ2。

レンタカーとかカーシェアリングでおなじみかもしれないけど、実は走りがなかなかよい。1.5リッターエンジンの「15BD」なるモデルは操縦性もよく、私としては依然好感度が高い1台です。

■選べるダッシュボードと“塗装しない”環境負荷への取り組み

▲2023年3月下旬発売のマイナーチェンジを受けたマツダ2

前述の走りも魅力ですし、もうひとつ、新しくなったマツダ2についておもしろかったのは“目に見えるところで見えない主張”を行っていること。

それ、どういうこと?

と、思われるでしょうか。たとえば車内のダッシュボード。今回3色が選べるようになっていて、なかなかオシャレなんです。つまりここは見える部分。

▲3色用意されるマツダ2のダッシュボードは塗装でなく製造工程で着色

見えない部分とは、着色の工夫。通常は、白っぽい合成樹脂のパネルの上に塗装を施します。しかしマツダ2 では、エンジニアリングプラスチックの成型時に顔料を入れて内部着色。

「植物由来原料の“バイオエンプラ(バイオエンジニアリングプラスチック)”を採用し、従来の塗装では実現できない高い質感を実現」したといいます。

「同時に、石油資源の使用量削減やCO2排出量の抑制、無塗装によるVOC(揮発性有機化合物)の削減など、環境負荷の低減に貢献しています」とも。

内装ではないけれど、工場オプションとして用意されるルーフフィルムも、塗装工程を回避しています。2トーンで雰囲気を出すコントラストカラーのルーフはあえてフィルムです。

フィルムにした大きなメリットは「塗装しないこと」とマツダの広報担当者。「従来の2トーンカラー塗装に比べてCO2排出量とエネルギーを大幅に削減しました」ということです。

▲マツダ2のルーフフィルムは工場装着のオプション

見えるけれど、見ているだけじゃ本質がわからない。いまのクルマは、そんなふうに”進化”しているといえるかもしれません。

インテリアは、いまのクルマのメーカーの考えを、実によく表してくれている場所なのです。

■カーメーカー各社の内装デザイントレンド

マツダ2もそうですが、レザーフリー(アニマルフリーともいう)化も、同じようなベクトルでとらえてもいい内装デザインといってもいいかもしれません。

一見、レザーですが、でもちょっと違う。いえいえ、ものによっては本革より質感が高いなんてことすらあります。

私がかつてテスラ・モデル3に乗ったとき、シートとステアリングホイール、ともに触ると手に吸いつくようなので、「アニリンレザーですか? 品質高い感じですね」と感想を口にしました。

それを聞いていたテスラ・ジャパンのひとは、「いえいえ」といいました。「すべて合成皮革です。テスラは株主からの要望もあって、レザーフリーなのです」と教えてくれたのです。

▲テスラは車体を一体成型できる巨大ダイキャストマシン「メガキャスティング」や、大型蓄電池生産工場の「メガパック」などインフラを精力的に準備中(写真はモデル3)

▲世界に先駆けていち早く内装の人工皮革化を実現したテスラ(写真はモデル3)

廉価なクルマはずっとアニマルフリーでしたけど(笑)、いまや、最新のレクサス車(たとえばEVのレクサスRZ)も合成皮革をあえて採用するようになっています。

▲自然との共生・共存によるサステイナブルなクルマづくりが高級感につながるとするレクサスのピュアEV、RZ450e

▲レクサスRZ450eは原料の約30%を植物由来としたウルトラスエードのシート地を使い、かつ、ステアリングホイールにも合成皮革使用

ボルボも、ペットボトルやワインコルクなどリサイクル材を使った合成皮革「ノルディコ」を開発。ボルボは、やがて、動物由来の素材を使うのをやめると発表しています。

▲ボルボが2023年の上海モーターショーでお披露目したプロトタイプ、EX90エクセレンス

▲EX90の内装はノルディコで仕上げてある

いまは、見えないところをあえて見て、クルマを評価する時代に入った、といえるかもしれません。

>> マツダ マツダ2

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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