先日発表され、大きな話題を呼んだハーレーダビッドソンの新型モデル「X350」と「X500」。特に「X350」は“中免”(普通自動二輪免許)で乗れるマシンであることと、70万円を切る戦略的な価格でも注目を集めています。
とはいえ、これまで大排気量のクルーザーモデルでブランドイメージを築いてきたハーレーダビッドソンの中では、“異端”と呼べるモデルであることも確か。空冷V型2気筒エンジンのイメージが強いブランドにあって、水冷並列2気筒の中排気量パワーユニットを搭載した新型2モデルはどんなマシンに仕上がっているのか? 実際に乗り回してみたインプレッションをお届けします。
■元気のいいスポーツマシンに仕上がっている「X350」
何といっても注目度が高いのは、日本国内で市販されるハーレーダビッドソンとしては過去最小の排気量となる「X350」。ハーレー唯一の普通自動二輪免許で乗れるマシンとしても期待を集めています。
エンジンこそ、水冷化の進む同ブランドの中でも異色の水冷パラレルツインですが、外観のデザインは歴史的なレーシングモデル「XR750」をオマージュしたもの。「XR750」の活躍したダートトラックレースをイメージしたトラッカースタイルとなっています。
ライディングポジションはかなりコンパクト。タンク長は短めで、着座位置は比較的前方で固定されています。ステップ位置はかなりバックステップで、フォワードコントロールが多い同ブランドのクルーザーに慣れていると違和感を覚えるかもしれませんが、近年ヨーロッパなどで人気のストリートファイター的な雰囲気です。
エンジンのボア×ストローク値は70.5×45.2mmとかなりのショートストロークで、トルクではなく回転数でパワーを稼ぐ設計。アクセル操作に対するレスポンスも鋭く、街乗りでも俊敏な加速が味わえます。最高出力は36HP/8500rpm、最大トルクは31Nm/7000rpmと特筆するほどパワフルではありませんが、スポーティなライディングを楽しむには十分なものです。
前後17インチのホイールに倒立式のフロントフォーク、モノショックタイプのリアサスペンションを備えた現代的なもの。ハンドリングもスペック通りに現代的です。これまでのハーレーダビッドソンのマシンといえば、バンク角にも制限があったりするものも珍しくありませんでしたが、このマシンならコーナーリングを楽しむこともできるので、ワインディングに出掛けてみようという気にもさせられます。
試乗した「X350」の印象は、キビキビ走る、できの良いスポーツネイキッドというもの。ライディングポジションやハンドリングはストリートファイターに近いものですが、スタイルは伝統のトラッカースタイルなので、尖ったデザインが苦手だけどスポーツライディングを楽しみたいという人には適したマシンでしょう。エンジン特性やハンドリングに変なクセもないので、初心者やリターンライダーが乗っても不安なく乗りこなすことができそうです。
■スポーツスター系を思わせる「X500」
2車種並んでいると、似ているように見える「X350」と「X500」ですが、実車を目の当たりにするとエンジンやフレームはおろか、外装パーツやフロントフォークに至るまで共通するパーツを探すほうが難しいほど異なっています。
トラッカースタイルのデザインである「X350」に対して「X500」はややスポーツスター系を思わせるルックス。やや角ばったデザインの「X350」のガソリンタンクに対して、「X500」は丸みを帯びた形状で、リアフェンダーのシルエットもスポーツスターを思わせるものです。
ライディングポジションも「X350」が着座位置が固定される感じだったのに対して「X500」は自由度が高いもの。ハンドルもより幅が広くアップライトで、リラックスした姿勢で乗ることができます。
エンジン型式は同じ水冷パラレルツインですが、ボア×ストローク値は69×66.8mm。ショートストロークではあるものの「X350」に比べるとストロークが長めとなっています。最高出力は47HP/8500rpm、最大トルク46Nm/6000rpmでフィーリングもだいぶトルクフル。同じ型式でも「X350」に比べると、トルクを活かしたハーレーダビッドソンっぽさが感じられる走りでした。
ハンドリングもコンパクトに曲がる印象だった「X350」に対して落ち着いた動き方をします。この辺りはホイールベースが1485mmと、350より75mm長いことや、車重が208kgと195kgの350に対して重くなっていることも関わっているようです。「X350」に乗った際はワインディングに行きたくなりましたが、「X500」の方は少し長めのツーリングに出かけたくなるような特性でした。
今年で120周年を迎えるハーレーダビッドソンの歴史の中でも、新たな境地を切り拓いたといえるXシリーズ。“ハーレーといえば空冷Vツイン”というイメージを強く持っている古くからのファンには、“らしくない”と思われそうですが、実際に乗ってみるとバイクとしての完成度・品質がともに高く、ベテランライダーも満足できる走りを実現しています。昔ながらの空冷Vツインを愛するライダーも、一度乗ってみればセカンドバイクとしてほしくなってしまうことでしょう。
最後に一点だけ不満に感じた部分に触れておきます。2モデルともメーターの造形はシンプルで良いのですが、表示項目が近年のバイクとしては限られているところです。回転数は、走行距離などを表示する部分にデジタルで表示させることができるのですが、視認性が決して良くはない。現代のマシンとしては、シフトインジケーターもあったほうがエントリーライダーには優しいのではないかと感じました。他が総じて良くできているだけに、ちょっと残念に感じてしまう部分です。
★SPEC★
「X350」
車両重量:195kg(出荷時180kg)
エンジン:353cc水冷並列2気筒DOHC
最高出力:36HP/8500rpm
最大トルク:31Nm/7000rpm
価格:69万9800円
「X500」
車両重量:208kg(出荷時199kg)
エンジン:500cc水冷並列2気筒DOHC
最高出力:47HP/8500 rpm
最大トルク:46Nm/6000rpm
価格:83万9800円
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/566439/
- Source:&GP
- Author:&GP
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