日本では「物流業界の危機」が叫ばれている。特に深刻な問題となっているのが、トラックドライバー不足だ。
人材が不足すると、今いる人材に多大な負担がのしかかる。そしてこれは、日本だけの話ではない。世界各国でトラックドライバーの不足問題に対応する技術的解決が求められている。
そんな中、アメリカのAurora Innovationという企業の開発した製品が注目を集めているようだ。Auroraが送り出すのは、レベル4の自動運転を可能にするトラックである。Volvoと量産型トラックの共同開発
本題に入る前に、レベル4の自動運転についておさらいしよう。
国土交通省の資料によると、自動運転レベル4とは「ODD(運行設計領域/限定領域)と呼ばれる決められた制限下(走行場所等)で、全ての運転操作を自動化した状態」である。平たく言えば、予め当局に提出した走行ルートの中で完全自動運転が認められるということだ。
Aurora Innovationのレベル4対応自動運転トラックシステム「Aurora Driver」は、すでに米テキサス州のダラス~ヒューストン間のルートを設定している。今年末までにこのルートでの運行を開始する予定だ。Aurora Driverは、貨物輸送トラックからライドシェア乗用車まで、幅広い車種に適応するように設計されたシステム。AIソフトウェア、デュアルコンピューター、イメージングレーダー、400m先の物体を検知できるLiDARなどを搭載している。
Aurora Driverは今年5月にラスベガスで開催された「ACT Expo 2024」で発表した、スウェーデンのVolvo社と共同開発した量産型自動運転トラック「Volvo VNL Autonomous」に統合されており、安全なナビゲートをサポートしている(参照)。
Volvo VNL Autonomousはバージニア州ダブリンにある工場で組み立てられ、量産される予定だ。
交通事故を減らすミッションも
2021年にはトヨタ、デンソーとの協業を発表し、日本のメディアにもその名を轟かせたAurora Innovation。一時は経営状況の悪化が各メディアから指摘されていたが、8月に株式を売却することにより4億8,300万ドルを調達することに成功した。また、この資金調達により上述のテキサスでの商用ルート運行が現実味を帯びるようにもなった。アメリカではトラックが絡む事故は50万件に上り、毎年6,000人近くが命を落としているとのこと。トラックに限らない全体の件数で見れば、アメリカでの交通事故死亡者数は毎年4万人以上。その惨事を減らすには、高レベルの自動運転は欠かせないだろう。
この事故件数の裏には、トラックドライバーの肉体的負荷があることは想像に難くない。アメリカは広大な平野や砂漠があり、かと思えば険しい山脈も存在する。そこを安全に進むには、人間よりも自動運転システムが最適だと考えられる。イレギュラーな事態にも対処
上の動画には、自動運転トラックのセンサー部に突然ビニール袋が飛んできたら……という想定が説明されている。この場合、障害管理システムが即座に作動して車道の右側スペースに停車するようプログラムされている(アメリカの道路は右側通行)。言い換えれば、人の手を借りなくても障害物を検知して安全な回避行動を取れるということだ。
とはいっても、「人の多い都市部の交差点で安全な運転を行えるのか」「他にイレギュラーな事態は想定できないのか」といった疑問点がまだ多いことは事実。それも含めて、今年中に実施されるテキサス州での商業運行に注目したい。
参考・引用元:Aurora Innovation
(文・澤田 真一)
- Original:https://techable.jp/archives/241987
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:澤田真一
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