新進気鋭のバッグブランド「EVERGOODS」のCEO兼デザイナーが話すブランド名に込められた意味とは

かさばるウエア類をスリムに圧縮できる収納バッグ、便利ですよね。でも、使ってみると手間がかかってかえってストレスになるがっかり製品も結構ある。

この春「EVERGOODS(エバーグッズ)」より発売された「トランジット・パッキング・キューブ」は、巾着とポーチを組み合わせた今までにない構造が使いやすいと話題のプロダクト。

これを設計したのはいったいどんな人物なんでしょうか?

 

■核となるデザインは彫刻的な手法から誕生

アメリカ、モンタナ州ボーズマンを拠点とし、都市とアウトドアの融合をテーマに製品開発を行っている「EVERGOODS」。

創設者のひとりでデザイン担当のケビン・ディーが日本の総代理店「サンウエスト」にやってきたので話を聞いてみました。

▲コードを引っ張ることでフチが立ち上がり、周囲にはみ出さない

話題の新作「トランジット・パッキング・キューブ」(7920円)はコードを引っ張ってフチを絞って荷物を押さえ込み、その上でパネルを被せて圧縮するシステム。

一般的な収納バッグは手で押さえながらファスナーを閉じますが、フチが手の代わりに押さえ込んでくれるなんて。驚きの発想力です。

▲ケビン・ディー。ジャック・バーリーとともに2018年に「EVERGOODS」のファーストプロダクトをローンチ

この画期的な製品をデザインしたケビンは、学生時代に彫刻を学んでいたといいます。

彫刻というと石や木を削って像を造るイメージですが、土台に粘土や石膏などを肉付けするのも彫刻だそうで、布や段ボール、粘土などいろいろな素材を使って立体作品を作っていたそう。

彫刻に没頭していたケビンですが次第にアートよりも実用的なものを作ることが好きだと気づき、独学で縫製技術を会得。

突拍子もない経歴に見えますが、たとえば新しいバックパックを作るためにはPCのソフトで原型となる設計図を作り、それを一度組み立ててから肩に沿うよう丸みを加えたり切り落としたりして数値をソフトに戻し…を繰り返して理想的なデザインに仕上げるわけで、ケビンによるとこの過程は彫刻と同じ。

徹底して作り込むのがとにかく楽しいと言います。

 

■目的が明確だからシンプルでカッコいい

製品開発ではそれぞれにテーマを設定。機能モリモリではなく、ほどほどにシンプルであることも心がけているそうです。

ロゴはその象徴。

なんてったって本体と同色の、正方形のメス側ベルクロを縫い付けただけで、このロゴの上に別のパッチを貼れるようになっているんですから。表面にはブランド名も製品名は一切ありません。

また、耐久性があって美しく仕上がるなら惜しみなく高品質の素材を使っているとも言います。

こうしたモノ作りの姿勢は前職での経験が大きな糧となったとも。

有名アウトドアブランドのバックパック作りに携わっていたケビンはデザイナーが作った型に触れる機会が多く、どういう構造が効果的に作用するのか、反対にうまくいかないのはなぜなのかを知るポジションだったそう。サンプルを作りながら常に「自分ならどうするか」を考えていたと言います。

見た目の機能だけでなく、生地の向きや補強の仕方、縫い方に至るまですべてに意味がある。だから「EVERGOODS」の製品にギア好きが反応するのでしょう。

 

■ケビンの個人的傑作は「CPL」シリーズ

創業から今年で7年。ずいぶんラインナップが充実していますが、ケビンのお気に入りは? しばらく悩んだ末の答えは「CPL(CIVIC PANEL LOADER)」シリーズ。

「やはり最初のプロダクトは特別です」(ケビン)

▲「シビック・パネル・ローダー 16L」(3万3000円)

いろいろな人に話を聞き、縦型のバックパックであっても片方の肩に掛けたりキャリーケースに載せたりして横向きになったバッグの中を探ることが多いことを知ったケビンは、横向きにしても型崩れせず、その状態で取り出しやすいようポケットの位置や向きを配置。PCスリーブは吊り下げ式で、縦横どちら向きにしても衝撃が加わりにくくしています。

▲「シビック・パネル・ローダー 24L」(3万9600円)

世の中にはPCスリーブ付きでバックパックとブリーフケースの2wayなんて星の数ほどあります。羅列する機能は同じでも「CPL」シリーズが使いやすいのは、縦型のバックパックでありながら横向きでの使いやすさにこだわっているから。納得です。

▲工事現場やミリタリーで使われるRCファスナー

「CPL」シリーズは防弾チョッキなどにも使われるバリスティックナイロン、YKKのRCファスナー、そして超々ジュラルミンのアルミステーなど質の高い素材を使ってトラブルなく長く使えるようにしていることも見逃せません。

 

■自然が広がり、モノ作りに理解があるボーズマン

「EVERGOODS」の拠点はアメリカ北部の町、ボーズマン。バックパック界の天才、デイナ・グリーソンの故郷としても知られていますが、シカゴ生まれのケビンとは無縁だったはず。なぜここを拠点としているのでしょう。

「モンタナ州はアメリカのなかでも自然が多く、ボーズマンはロッキー山脈の麓に広がる田舎町。釣りやハイキング、ハンティングなどいろいろな遊びができる、美しい場所です。半面、都市部のように便利なサービスはありません。雪が降ると自分で雪かきをするし、なにかあると自分で工夫しなければならない。ハンドメイドの技術、文化が根付いていてパック作りの拠点に向いていると思ったのです」

休日には家族とともにスキーやハイキングに出かけているとのこと。自分が手がけたバッグのフィールドテストにもなるし、出かけているうちに新しい製品のヒントも生まれる。なんだかとってもうらやましい環境です。

▲「マウンテン・パネル・ローダー 30L」(3万8500円)

そういえば「CPL」と同時に登場した「MPL(MOUNTAIN PANEL LOADER)」はスキーやハイキングを想定し、ヒップベルトやハイドレーション用のポケットを装備していますが、街中ではヒップベルトを取り外したクリーンなシルエットに変身可能。そしてハイドレーションを吊るメインポケットはPC対応でもあります。

一方、「CPL」はスクエアに見えますがわずかに下部を絞ったアウトドアパックに通じるデザイン。ヒップベルトこそありませんが重心を高くしやすく、ハイキングにも使えます。

「CPL」と「MPL」、どちらもボーダレスに都会と自然をつなぐ「EVERGOODS」を代表するプロダクトですが、ボーズマンという自然豊かな環境は製品作りに大きなヒントとなっていそうです。

ブランド名に含まれている「GOODS」には、「製品」と「良い」というふたつの意味があります。

ブランド立ち上げ当初に作られたのがバックパックだったので“バックパックブランド”と言われることが多いけれど、いずれ幅広く良質な製品を手がけたいと考えていたので「EVERGOODS」と名付けたそう。

バッグやオーガナイザーの次は何が飛び出すのか聞いてみましたが「まだナイショ」と笑顔でかわすケビン。

アパレル、それともハードウエア? 驚きのプロダクトが加わる日を楽しみに待ちたいですね。

>> EVERGOODS

<取材・文/大森弘恵

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。X

 

 

 

 

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