サウンドバーとは、テレビの音を手軽にグレードアップするための横長スピーカー。そう説明されることが多く、実際「音質を少し良くする付属品」として捉えている人も少なくないでしょう。
しかし、Bang & Olufsen(バング & オルフセン)が発表した「Beosound Premiere(ベオサウンド プレミア)」(74万7000円〜)は、その認識を大きく覆します。このサウンドバーが目指したのは、音を前に出すことではなく、空間そのものを成立させること。テレビの脇役ではなく、リビングの主役になりうる存在です。

Bang & Olufsenは、1925年にデンマークで創業したオーディオブランド。美しい音、タイムレスなデザイン、そして比類なきクラフツマンシップを一貫して追求してきました。その思想は、今回のBeosound Premiereにも色濃く反映されています。
本作の核となるのが、立体的な空間音響の設計です。内部には10基のカスタムドライバーを搭載し、上向きに音を放つアップファイアリングドライバーも組み合わせることで、高さと奥行きを伴う音場を構築しています。
▲カラーは写真のNatural Aluminiumのほか、Gold Tone、Black Anthraciteをラインナップ
ブランド独自の「Wide Stage Technology」は、音の方向性を精密に制御し、実際の筐体サイズを超えた広がりを感じさせる技術。外部スピーカーを追加したかのような錯覚を生みながら、単体で完結する点が特徴です。
セリフは明瞭に、音楽や映画は包み込むように。音が主張しすぎず、映像と自然に溶け合うバランス感覚に、同社らしいチューニングが感じられます。

デザインについても、一般的なサウンドバーとは明らかに異なります。横に長い箱ではなく、立体的なシルエット。しかしそれは、見せるための造形ではありません。
スピーカーユニットの配置や音の放射方向を、そのままデザインに落とし込む。中央に配置された上向きのツイーターや、精密に加工されたアルミニウムの筐体は、すべて音響設計と直結しています。

マットなサテン仕上げのアルミニウムは光を柔らかく受け止め、リビングに置いたときも主張しすぎない佇まい。上質な空間づくりの一翼を担う存在といえるでしょう。

なお、Bang & Olufsenは、音と同じくらい「つくり」にも重きを置くブランドです。純アルミニウムから削り出された筐体をはじめ、細部まで妥協なく仕上げられています。
▲写真は「Beosound Premiere(ファブリックカバー付き)」:79万2750円
創業年にちなんだ1925個の穿孔が施されるなど、ファンならずともニヤリとするディテールも印象的。それらは決して目立つための演出ではなく、長く使うほどに気づくための要素です。
▲写真は「Beosound Premiere(ウッドカバー付き)」:91万5000円
音、形、つくり。そのすべてを高い次元で成立させることで、Beosound Premiereは「サウンドバー」という枠を超えた存在になっています。

ちなみに、世界25台限定で「Beosound Premiere Haute Edition」も登場しています。彫刻的な加工をさらに押し進めた特別仕様で、17時間をかけた切削による放射状のパターンは、まるで音の波動を視覚化したかのよう。
価格は198万1500円。誰にでも勧められるものではありませんが、Bang & Olufsenが音と工芸をどう捉えているかを、最も純度の高い形で示した一台です。

Beosound Premiereは、音を良くするための道具というより、空間そのものを整えるための装置に近い存在。テレビの前に置くもの、という発想を超えて、音・形・空間をまとめて考えたい人にこそ響く一台でしょう。
<文/若澤 創(GoodsPress Web)>
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