【酒と泪と男とカルチャー】
普段、外でも自宅でも楽しんでいるサントリー「白州」。何気なく飲んではいますが、その一杯が届くまでの工程を知っている人は意外と少ないもの。しかし、そこにはとてつもない企業努力や職人たちの思いが詰まっています。そこで今回は普段あまり見る機会のない、ウイスキーがどのように作られているのか、その裏側を覗いていきましょう。
■世界中から愛される、ジャパニーズウイスキー「白州」。その蒸溜所に直撃
日本が世界に誇るジャパニーズウイスキー「白州」が一体どのように作られているのか、その実際の現場を取材するべく、山梨県北杜市にある「サントリー白州蒸溜所」に行ってきました。森に囲まれた自然豊かな土地、そして南アルプスの美味しい水、さまざまな条件が揃うこの場所で「白州」は作られています。
▲蒸溜棟の外観
まず向かったのは蒸溜棟。「白州」のロゴが掲げられた外観は和とも洋とも捉えられる何ともしゃれた雰囲気です。この「サントリー白州蒸溜所」の歴史は古く、サントリー第2の蒸溜所として1973年に竣工されました(第1の蒸溜所は1923年に建てられた日本初のモルトウイスキー蒸溜所「山崎蒸溜所」)。そして建設から20年以上のときを経た1994年に「白州」が発売。そこから約30年、日本をはじめ世界へ送る「白州」を作り続けています。
1. まずはエントランス。ここで全工程の流れを把握

エントラスを抜けると、「白州」ができるまでの工程をわかりやすい図にした壁面がお出迎え。ここ「サントリー白州蒸溜所」は一般の人々も見学できるため、入った瞬間に「ここでは何が行われているのか」を解説してくれるんです。
▲プロジェクションマッピングで一連の流れを見せてくれる

製造過程は原料選定を含め、大きく分けて6工程。「原料(選定)」「仕込み」「発酵」「蒸溜」「貯蔵」「ブレンド」からなりますが、どの製造過程にも並々ならぬ情熱や苦労があり、それぞれ別ベクトルの難しさがあると言います。「原料」である麦芽の乾燥時にピートと呼ばれる燃料を用い、燻しながら香り付けが行われるのですが、この過程で原酒に「白州」ならではの香りや風味が備わるそう。それ故、無数にある中から「白州」の味を決めた開発時は相当な試行錯誤があったと予想されます。
2. いざ、製造現場へ。最初は「仕込み」から
▲仕込み槽は直径9メートルほど
プロジェクションマッピングを眺めたあとは実際に作業している現場に移動。ここでの最初の工程は「仕込み」。仕込み槽で細かく砕いた麦芽と仕込み水(地下天然水を一定の温度に温めたもの)を混ぜ合わせ麦汁を作り、麦芽のデンプンを糖分に変えます。季節によって蒸溜所内の温度も当然変わるので、基本的に365日24時間チェックする必要があるそう。ちなみに、この仕込み水に使用する水の硬度が違うだけでも最終的な味わいが全然違ってくるため、「白州」は全国各地の名水をテストし、最も理想的なここ南アルプスの水を選んでいるとのこと。
▲仕込み槽内の様子。蓋を開けると麦の香りが漂う
3. 続いては「発酵」。ここでようやくアルコールが発生
▲全部で18機の発酵樽がずらりと並ぶ
「仕込み」のあとは「発酵」に移ります。ここでは3日間かけてじっくりと発酵させるのですが、ここでようやくアルコール度数は約7%まで上昇します。酵母が麦汁を分解し、アルコールと同時に炭酸ガスも発生するため液面は白い泡で覆われるのが特徴。ちなみに、この炭酸ガスにより樽から溢れてしまうと、さあ大変。酒税法でアルコール飲料を作る際、どれくらいの量を作るのか(できるのか)を提出する必要があるため、もしこぼれてそのままにしてしまうと提出している量と齟齬が出てしまい法律違反になってしまうのだとか。そのため、樽内にあるプロペラで定期的に上がってくる泡を撹拌するそう。
▲発酵樽の中。液面は炭酸ガスによる白い泡が。発酵による独特の香りが漂う
▲発酵樽の高さは約4.7mで、総容量はおよそ7万5000リットルにもなる。蓋の開閉だけでもかなりの重労働
「サントリー白州蒸溜所」には全部で18機の発酵樽があり、そのすべてが伝統的な木の槽。ステンレスタンクよりも温度管理は難しいそうですが、“木”で作るからこその香味が生まれるとのこと。この昔ながらの作り方は苦労も絶えませんが、そのおかげで美味しい「白州」が生まれているのです。
4. いよいよ「蒸溜」。アルコール度数を一気に上げる
▲蒸溜釜が並ぶ姿は圧巻。まるで管楽器のような美しさも感じられる
発酵樽から“もろみ”を取り出し、いよいよ作業は「蒸溜」へ。“もろみ”を釜(初溜釜)に入れて直接火を当て直火で「蒸溜」を行います。この作業でアルコール度数は20%程度まで上昇。その後さらに再溜釜に入れ、間接的に熱することで最終的にはアルコール度数は約70%まで高くなります。そうして「原酒」が作られるわけですが、この「原酒」をどう混ぜるかでシングルモルトウイスキーやブレンデッドウイスキーなどタイプの違うウイスキーを作り出せるそうです。これだけ大きさが違う釜が揃う蒸溜所は世界的に見ても珍しいらしく、それだけサントリーではさまざまな原酒を作り分けられるということ。
▲写真中央の釜の窓を見ると“もろみ”が沸騰しているのがわかる。ちなみに素材は銅
この「蒸溜」という作業、単に火を当てていれば良いわけでは当然ありません。実際につくり手たちが蒸溜釜の窓から中の様子を確認し、泡の弾け方など微妙な変化を見極めながら火加減の調整を行っています。つまり、「仕込み」も「発酵」も「蒸溜」も、技術が進歩した今でも、きちんと職人たちの手をかけることで「白州」の味が保たれているというわけです。
5. 最後は「貯蔵」。“熟成”が味の決め手に
▲貯蔵庫はおよそ2万丁もの樽が収蔵可能
最後の過程、「貯蔵」。「サントリー白州蒸溜所」では最大で2万ほどの樽が貯蔵できるそうですが、意外なことに温度管理はしていないそう。と、言うのも樽材自体が自然由来の素材を使用していることもあり、森の気温に合わせて熟成させる方法を取っているからなのだとか。熟成させる場所によって原酒の個性が変わるため、この「サントリー白州蒸溜所」の気温・環境がそのまま「白州」としての個性に直結するわけです。1樽1樽ロットで管理されていて、何年もかけて熟成させていくのですが、中には30年以上も寝かせているものも。
▲左は右よりも長期熟成したもの。量や色が全く変わってくる
熟成していくと年平均2~3%蒸発していくそうですが、減った分を追加していくワインと違い、ウイスキーは熟成のピークを迎えるまでそのままだそう。また、同じ個性の原酒を作ろうとしてもほぼ不可能というのがウイスキー作りの難しさでもあり、面白さでもあるようです。そんななか、色の濃さや風味など異なる原酒を使って一定の品質の製品を作り上げるのが、最終的な風味を司るブレンダーの腕の見せ所。ブレンダーは味覚や嗅覚の感覚を常に研いでいないといけないため、体調管理や食事制限など日頃から自身のコンディションには非常に気を付けていると言います。ブレンダーは一度に数百もの原酒をチェックすることも。
▲「白州」の貯蔵樽には主にホワイトオークが用いられる
▲「白州」にメインで使うのは左2つ。「バーレル(左)」は180リットル、「ホッグスヘッド(中左)」は230リットル
■「白州」は職人たちの努力の結晶だった

さまざまな工程を経て生まれる「白州」。そこには職人たちが日々情熱を注ぎ込み、たゆまぬ努力を続けている結果、我々のもとへと届けられているのがよくわかります。いつも楽しんでいるロックや水割り、ハイボールが一体どのようにして作られているのか。それを知ったうえで飲んでみると、きっといつもとは違った味わいが広がるはずです。
>> サントリー「白州」
<取材・文/手柴太一(GoodsPress Web編集部) 撮影/坂下丈洋>
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- Source:GoodsPress Web
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