独自の商品やオープンソース商品の周囲にコミュニティを構築したい企業や団体のためのツールを提供するスタートアップOrbit(オービット)は、米国時間12月2日、Andreessen HorowitzのMartin Casado(マーティン・カサド)氏が主導するシード投資ラウンドで400万ドル(約4億1800万円)を調達したことを発表した。このラウンドには、以前からの投資者であるHeavybitとHarrison Metalに加え、Chris Aniszczyk(クリス・アニズィック)氏、Jason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、Magnus Hillestad(マグナス・ヒルスタッド)氏といったエンジェル投資家、さらに16zのCultural Leadership Fundも参加している。
同社はそのサービスを「コミュニティ体験プラットフォーム」と説明している。現在Orbitは、企業のデベロッパーリレーションズ担当部門とコミュニティ担当部門に加え、オープンソースのメンテナンス担当部門に焦点を絞っている。しかし、その全体的なフレームワークがあらゆるコミュニティに深く対応可能であることを思うと、その他の垂直市場へ手を広げられない理由はない。
Orbitの共同創設者Patrick Woods(パトリック・ウッズ)氏が私に話したところによると、コミュニティの管理者は、そのコミュニティに大きく貢献してくれる人をなかなか探し出せず、大変に苦労してきたという。なぜなら、貢献はいろいろな形でなされるものであり、さまざまなプラットフォームにわたって行われることが多いからだ。さらに、販売やマーケティング部門は、コミュニティが企業の総合的な収支に与える影響をあまりよく理解していないという問題もある。Orbitは、プラットフォーム間に分散されているあらゆる貢献を収集する。
「いかにしてコミュニティが市場開拓やビジネス価値にインパクトを与えることに関して、理解が欠如しています」とウッズ氏は、このアイデアの出所について私が尋ねた際に答えていった。「そこに関与する手段という点で、大きなギャップがあります。コミュニティが重要であることは多くの企業も認めていますが、今日、コミュニティ販売機に投入した1ドルが、どんな結果として現れるかを知るのは困難です。半分にになるか、100ドルの結果を生むか?それが、あらゆる規模の企業を通じて、私たちが認識した総合的な課題です」。
特にオープンソースのコミュニティでは、大きな価値を生み出しているにも関わらず企業との商業的なつながりを一切持たない人たちが必ずいるものだ。たとえ企業が、事業の成長にコミュニティは必須だと理解していたとしても、このことが、コミュニティによるインパクトの数量化をさらに難しくしている。そこでOrbitはこう説明する。「コミュニティは新しい形の先行販売」だと。
企業としてのOrbitの中核をなすのが、オープンソースコミュニティのフレームワークOrbitだ。共同創設者でCEOのウッズ氏とCTOのJosh Dzielak(ジョシュ・ジラク)氏は、彼らが「High gravity community」(引力の強いコミュニティ)と呼ぶ、新規参入者を惹きつけ、既存メンバーを離反させないコミュニティを構築する最良の方法と、その評価方法を企業に理解してもらうためのフレームワークを開発した。詳しいコンセプトはこちら(GitHub)をご覧いただきたい。
「私たちは、このリードからどれだけの価値を引き出せるかというような、抽出型の世界観から引き離して、対話を再構成しようと考えています。コミュニティのメンバーからどれだけのLOVE(愛)を生み出せるか、といったほうがいいかも知れません」とウッズ氏。「これからやりたいことに関連する文化を考えることは、根本的にクリエイティブで生産的な作業です。そこで私たちの目標の真意は、価値の抽出よりも価値の創出を重視できるように人々を手助けすることにあります」。
とはいえ、コミュニティ構築の作業にどのような哲学がともなっていたとしても、最後には投資利益率を測定して、一部のコミュニティメンバーを有料会員にする必要が生じる。それを行うために、現在Orbitでは、GitHub(ギットハブ)やTwitter(ツイッター)やDiscourse(ディスコース)といった情報源からデータを引き込んでいる。Slack(スラック)やその他のツールにも間もなく対応する。そうすることでこのサービスは、コミュニティ内で何が起きているか、誰が参加しているかをコミュニティ管理者が簡単に把握できるようにしている。
専用のダッシュボードに加え、Orbitでは収集したすべてのデータをサードパーティーのサービスに統合するためのAPIも提供している。
「Orbitのビジョンを推し進める上で重要となるのは、コミュニティは単なる情報集めの道具ではなく、コミュニティ作りは忠誠を求めるものでもなく、人と人のつながりを作るものだと理解することです。対話と関わり合いを醸成し、オープンで互いに貢献し合い、価値を捕らえるのではなく作り出すことです」と16zのカサド氏は書いている。「このモデルは非常に効率的であることが証明されています。Orbitは現在、その周囲に製品を作り上げました。開発者に重点を置いた企業を立ち上げようとする人たちにとって、Orbitは必須の製品になると、私たちは確信しています」。
同社はすでに、150社弱の企業とPostman(ポストマン)、CircleCI(サークルシーアイ)、Kubernetes(クバネテス)、Apollo GraphQL(アポロ・グラフキューエル)といった顧客たちと協力している。
数週間前にクローズしたばかりの投資金の使い道はいろいろある中で、同社は、市場開拓事業の構築や、さらに大きな統合のための開発を行う予定だ。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Orbit、オープンソース
画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images
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(翻訳:金井哲夫)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/12/03/2020-12-02-orbit-raises-4m-for-its-community-experience-platform/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Frederic Lardinois
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