裏返して置くと、元の形に戻るときの反発力でジャンプするポッパーというおもちゃがある。ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクール(SEAS)の研究者らが、これにインスパイアされてソフトロボットを開発した。
このソフトロボットには、「座屈」を利用してエネルギーを放出する。弱い力であっても、徐々に加えられた荷重が一定水準に達すると、構造が急激に変化するこの現象は、機械エンジニアリング的に破壊の文脈で扱われることが一般的。
ただ、ポッパーのように座屈から移動エネルギーを得ることもできて、研究者らは今回これをソフトロボットで利用した。
重なったシェル型キャップの圧力を利用
Buckling is the stuff of engineering nightmares but these engineers harnessed it to build a fast moving soft robot: https://t.co/NlbT24P5tm @SciRobotics @NSF pic.twitter.com/kj6f1VIIHb
— Harvard SEAS (@hseas) May 21, 2020
人工筋肉から倉庫でのピッキングまで広く活躍が期待されるソフトロボット。通電などによる素材の伸縮を利用して動くのが一般的だ。ただ、動きの速度に課題を抱えていて、今回研究者らが開発したものはこれの解決を試みた。
動画を観てわかるように、ポッパーロボットは、高速でジャンプすることが可能。座屈のエネルギーをうまく利用した結果だ。
研究者らは、2つのシェル型キャップが重なったかたちのアクチュエーターを設計。膨張していく過程で、ある程度圧力が高まるまで安定性を保持し、その後いっきに内側のキャップが凹むように設計した。このとき放出されるエネルギーで、ソフトロボットは地面を打ってジャンプする。
動画だけ観るとシンプルに感じられるかもしれないが、この構造を実現する裏には緻密に組み立てられた理論があるようだ。
2つのシェル間の圧力を緻密に計算
今回開発されたシェル構造は、座屈による故障を防ぐための構造を先駆的に研究してきた、ジョンW.ハッチンソンハーバード大名誉教授の理論を応用したもの。2つのシェル間の圧力と体積の関係を理論に落とし込んで、パフォーマンスの制御と最適化に活かしている。
最新の数値シミュレーターも活用し、「膨張を利用したソフトアクチュエーター」を構築。ついにはエネルギーを繰り返し放出できるソフトロボットの開発に至った。
このアプローチは形状とサイズを選ばないため、小さな医療機器で静脈に注射針を刺す用途から、大規模な探索ロボットで不均一な地形を横断するための用途にまで使用できるとのこと。
参照元:Next generation of soft robots inspired by a children’s toy/ SEAS
- Original:https://techable.jp/archives/125525
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:YamadaYoji
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