2020年の完全ワイヤレスイヤホン市場で注目は、やはり“ノイキャン”。低価格で勝負する中国メーカーのMpow(エムパウ)は、“ノイキャン”搭載の「X3 ANC」を実勢価格1万円という戦略的なプライスで投入してきました。
さっそく実機で検証してみましょう。
■ノイキャンは…弱い!?
MPOW初の完全ワイヤレスイヤホン「X3 ANC」。MPOWというブランド、イメージはアマゾンで激安で販売されているイヤホンだったのですが…、このモデルはパッケージだけでなく説明書まで完全に日本語。この春、日本法人のMPOW JAPANができて、メーカーとしての体制が整ってきたからなんでしょうね。
イヤホンはステムと呼ばれるアンテナ部分が耳下に伸びるタイプ。片側の重量は実測値で4.6gと標準クラス。IPX4の防滴にも対応します。
イヤホンは挿入角度も付いていて耳に収まるのですが、装着時の異物感は強め。S/M/Lと交換できる標準イヤーピースはノイズ遮断重視のタイプなのですが、密閉してるとも呼べない独特の装着感です。
ソフトタイプのイヤーピースS/M/Lが同梱されているので、より自然な装着感ならこちらがオススメ。音質の違いは後ほどレビューしていきます。
再生時の操作はイヤホンのにある凹み部分をタッチ。凹みのお陰で誤操作しづらく実用性は十分です。再生/停止、曲送り/戻し、音量操作、ノイズキャンセルと一通りの機能がそろいます。
バッテリー性能はイヤホン単体で6時間再生(ANCオン)と十分。充電ケースと合わせて最大18時間。充電ケースも小型なので、持ち歩きやすさは問題ナシ。
ビデオ会議用にPCとペアリングして通話マイク性能をテストすると声は十分クリア。ただし周囲の雑音やBGMなども比較的しっかりと拾うタイプなので、カフェやBGMの流れている環境には不向きかも。なお、混雑した電車内や駅構内でもワイヤレスの音途切れはありませんでした。
音楽リスニングで有効なノイズキャンセルも検証してみると…。「X3 ANC」のアクティブノイズキャンセリングはフィードフォワード方式のみなので、あまりハイスペックなものではありません。部屋のエアコンの騒音など軽めの騒音は消えるのですが、電車の走行音などは騒音のボリュームを全体的に抑える控えめな性能。ノイキャンに伴う違和感は少ないので、とりあえずオンで使えます。
■装着次第で音が激変
ではいつものように、iPhoneと接続して音質をチェックしていきましょう。
宇多田ヒカルの『あなた』から聴いてみると、特に声の通りが良くセンターにエネルギーを集中させたサウンド。中域はドライですが空気を震わせるような重低音のエネルギーも強烈。BrunoMarsの『24K Magic』もクラブ系の音楽を強烈に沈むビートで聴かせてくれます。試聴していて気づいたのですが、イヤーピースの僅かなズレでサウンドが激変。しっかりと耳深く挿入しないと、軽めの音に聞こるので要注意。
同梱されているソフトイヤーピースに交換すると、音質の基本的な傾向は似ていますが、中域の情報量が増す一方で低音は若干抑え気味。ソフトイヤーピースの方がフィットもラクで、普段遣いならソフトイヤーピースをオススメします。
* * *
約1万円で購入できるノイキャン完全ワイヤレスとして注目の「X3 ANC」ですが、ノイキャンは効き目は弱いけど一定の効果はあるし、音質も全体的なイヤホンとしての作り込みも問題ナシ。ノイキャン搭載で約1万円は、やはりインパクトがありますね。
>> MPOW「X3 ANC」
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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