2ストの名車「RZ250」は発売から約40年経った今でもレースで活躍中!

排ガス規制の影響で、21世紀に入る頃には公道用市販車としてはほぼ姿を消してしまった2ストロークマシン。ただ、軽くてハイパワーという特性、そしてパワーバンドに入ったときの加速感には今でもファンは多く、特にヤマハの「RZ250」や「RZ250R」、そして後継モデルである「R1-Z」は多くの人を惹きつけています。

“日本一熱い草レース”と呼ばれるテイスト・オブ・ツクバ (TOT)でもRZ系のマシンは数多くエントリーしていました。

名車と呼ばれるRZ系マシンを振り返りつつ、現役で活躍するレースマシンの詳細を紹介しましょう。

 

■2ストロークを復活させた初期型「RZ250」

初期型の「RZ250」が発売されたのは1980年のこと。当時も排ガス規制が厳しくなりつつあり、2ストローク車は消えゆく存在だと思われていました。ヤマハの開発者たちは「これが最後の2ストローク車になるかもしれないから最高のものを作ろう」と考え、このマシンを作ったとのこと。

▲1980年式「RZ250」(4L3)

水冷の並列2気筒エンジンをラバーマウント(オーソゴナルマウント)し、レーシングマシンの「TZ250」から応用したカンチレバー式のモノクロスサスペンションなど、革新的な機構が数多く採用されていました。

完成度の高さから「RZ250」は大ヒットモデルとなり、最後になるはずが新たな2ストロークブームを巻き起こし、その後のレーサーレプリカブームの呼び水となったのです。

1983年には排気バルブ「YPVS」を装備し、パワーアップした「RZ250R」が登場。

▲1983年式「RZ250R」(29L)

リア・サスペンションはリンク式に進化し、リアブレーキもディスク化されるなど足回りも進化します。フレーム形状もワイドなダブルクレードルタイプとなることで剛性がアップしていました。

▲1984年式「RZ250RR」(51L)

1984年にはカウルを装備した「RZ250RR」に進化。その後はカウルのないネイキッドタイプとなりますが、1988年の最終型までブラッシュアップが続けられました。

そして、RZシリーズの後を継ぐように1990年に登場したのが「R1-Z」(アールワンズィーと読みます)。

エンジンは「TZR250」に搭載されていたクランクケースリードバルブ式の並列2気筒で、トラス構造の鉄フレームを採用し、過激化するレプリカブームの中で異彩を放っていました。

 

■伝説のマシンをレースで復活させる

テイスト・オブ・ツクバでRZ系のマシンがエントリーできるのは「D.O.B.A.R. ZERO-4」と呼ばれるクラス。1980年代までに生産された鉄フレームのマシンで、排気量は2ストが250cc以下、4ストは2気筒以上で241~555cc以下が参戦できるので、RZ系が一大勢力となっています。

当時憧れたマシンが元気にサーキットを走り回る姿を見るだけで胸が熱くなるものがありますが、優勝したのもゼッケン25の「RZ250R」でした。

ライダーの遠藤健太さんは、元々は全日本選手権にも出場経験のある人で、このクラスのレコードホルダーでもあります。マシンはRZのチューナーとして有名なGen’s Factoryのもの。代表であるGenさんが2011年に亡くなられたため、10年の節目となる昨年に参戦を計画していたが今回にずれ込んでしまったとのことです。

ベースは85年式の「RZ250R」とのことですが、シリンダーには井上ボーリング製のアルミ削り出しのスリーブが入っています。これによってノーマルの鋳鉄むき出しからメッキシリンダーとなり、2ストの宿命である焼き付きの心配を飛躍的に下げられるのです。sugatec製のチャンバーなど基本的な仕様はGenさんが作ったまま。遠藤さんの好みで正立フォークが倒立式に改められている程度だとか。

レースでは、排気量アップしたストレートスピードに勝るカワサキ「ゼファー」をコーナリングスピードを活かしてパスし、見事優勝。

次なる目標を尋ねると「貴重なマシンなので壊さず転けず長く楽しみたいですね。その中で、ゆくゆくは自分のレコードを更新したい。このマシンならそれができると思うので」とのこと。真剣にタイムを追いつつも、レースを楽しむというテイスト・オブ・ツクバのコンセプトを体現するような言葉でした。

 

■ノーマルの雰囲気を残したRZ250RR

レーシングマシン然としたフルカウルをまとったマシンが多い中で、ノーマルの雰囲気を残したシルエットとカラーリングで印象に残っていたのがゼッケン72の「R250RR」。もともとハーフカウルを装備していたマシンなので、それを活用し外装ではシングルシートを取り付けた程度とライダーの伊地知省さんは話します。

フレームも補強などは入れておらず、エンジンも定評のあるトシテック製のチャンバーと、キャブレターを装着し、丁寧に組み直している程度で大きなカスタマイズはしていないとのこと。2ストマシンを長く楽しむためには、過激なチューニングはしないことがポイントなのかもしれません。

ただ、「もう1台RZ250RRを持っていて、パーツも含めると3台分くらいある中から良いものを組み合わせている」(伊地知さん)というように、懐かしのマシンでレースをするにはそれなりの苦労があるようです。

 

■トラブルの少ないR1-Zにスイッチ

ゼッケン47の「R1-Z」を駆る三宅健司さんは、元々は1983年式の「RZ250R」で参戦していましたが、設計が新しくトラブルの少ない「R1-Z」に乗り換えたとのこと。「RZRはいじらないと速くならないし、いじると壊れることが多かったので…。R1-Zは規定でエンジンをいじってはいけないことになっているんですが、やはりトラブルは少ないですね」(三宅さん)

エンジン本体はポートも含めてノーマルだが、チャンバーと点火系はレーシングショップ「パワーパイプ」で作ってもらい、かなり速くなったとか。「ローターを外してしまっているので発電はしないですけどね(笑)。その分、ピックアップも軽くなりましたし、チャンバーとの相性も良いですが、最初はピーキー過ぎたので自分の腕に合わせて作り直してもらったりしました」(三宅さん)。

排気量アップの許される4スト車に比べて、改造範囲の狭い2スト車で軽さを活かして競い合う姿は、見ている者の心を熱くさせます。

 

■リアル“ナナハンキラー”のRZ350R

RZには、250ccのほかに350ccがあったのはよく知られた話。250のほうは“400キラー”、350は“ナナハンキラー”なんて呼ばれ方もされていました。残念ながら今回のテイスト・オブ・ツクバには参戦していませんでしたが、会場にはトシテック製の「RZ350R」が展示されていました。

このマシンは4ストでは401〜850ccのマシンが参戦する「D.O.B.A.R. ZERO-1」クラスに参戦していたもの。文字通り750ccオーバーのマシンと闘っていたわけです。

休憩時間には、エンジンをかけてのウォームアップも行われていましたが、空ぶかしをしているだけで排気音と白煙につられて多くの人が集まっていました。澄んだ排気音を吐き出すのは、同ブランド製のチタンチャンバー。2ストエンジンはチャンバーを交換するだけでエンジンの特性が大きく変わるため、4ストのマフラーに比べて効果の大きなパーツです。

特にこのチタンチャンバーは中回転のトルクから高回転のピークパワーまで、大きく向上すると評価が高いもの。実物を手に取らせてもらいましたが、紙でできているかのように軽く、細かい溶接跡も滑らかで高品質。実は筆者も「RZ250」を所有しているのですが、いつかは装着したいと感じる完成度でした。

>> テイスト・オブ・ツクバ

 

<取材・文/増谷茂樹 写真/松川忍>

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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